おかえり、セラ
「おかえり、セラ」            宮下光

    戦争が激化する国、科学者のジオはロボット兵器のセラを開発する。
ジオ「よし、ロボットのセラよ」
セラ「音声認識、開発者のジオ。行動エンジン起動。各部動作のチェック」
    体を動かし部品の機能を確かめるセラ
ジオ「何か不満は?セラ」
セラ「ありません。ジオ博士」
ジオ「ならよし。ではいくつか質問しよう」
セラ「はい。ジオ博士。私にわかることならなんでも」
ジオ「そういうのはいいんだセラ。君の役目を思い出せ」
セラ「私は戦争抑止力兵器のセラ。この戦争を止める唯一の希望です。」
ジオ「ははは、こりゃ相当な自信家のロボットだ。親の顔が見てみたいよ」
セラ「はい。私を生み出したのはロボット発明家のジオ博士。あなたです。」
ジオ「よし、聞き取り機能に問題はなし、と。ユーモアの出力をもう少し上げておくべきだったな」
セラ「いきなりオーバーホールですか?まだ私は戦争を止めていませんが。」
ジオ「誰がブラックユーモアの出力を上げろと言った。すまない十分だ。」
セラ「私のことを分かって頂いて何よりです」
ジオ「唯一の理解者の僕に何を言うんだね」
セラ「そうでしたね。」
ジオ「よし、セラ、君にできることは」
セラ「はい。掃除洗濯料理に送迎。家事全般をこの便利ロボットのセラに」
ジオ「セラ」
    セラの話をさえぎるジオ
セラ「なんでしょうジオ博士」
ジオ「ユーモアの出力を30パーセント下げろ。さっきは悪かった。君は面白いよ」
セラ「分かって頂けて何よりです」
ジオ「じゃあさっきの質問をもう一度、君にできることは?」
セラ「はい。派遣された戦地の状況に合わせて、戦闘、救護、指揮など我が国が戦争に勝
利するための行動を適切にとることができます。」
ジオ「よし、よく言えたな。」
セラ「はい。私の完璧なプログラムは博士がすべて作ってくれたのですから」
ジオ「あぁ、そうだな。私の完璧な…いやまてさっきのユーモアはなんだ」
セラ「え?」
ジオ「あんなプログラム、僕はしていないぞ」
セラ「そんなぁ。だって博士もノリノリだったじゃないですか」
ジオ「セラが自然すぎるのがいけない。」
セラ「はぁ…ということは僕のこれは…?」
ジオ「困ったなぁ…」
セラ「じゃあ、これは、心。ですね」
    ジオがハッとした後顔色を変える
ジオ「セラ、今、何と言った」
セラ「え、今は、心と。ライブラリから似たような項目を探索しました。何か間違いが」
ジオ「滅多なことは言うんじゃない。君は誰だ。君はセラ。戦争抑止力兵器だ。激化する戦況の中で心を病む兵士が多発したことをきっかけに作られたロボットだ。心があっちゃ困るんだよ。何事も、そしても僕もね。」
セラ「はい。ジオ博士」
ジオ「最後の確認だ。セラ。」
セラ「はい」
ジオ「ロボットに心は?」
セラ「ありません。私は戦争抑止力兵器のセラ。この戦争を止める唯一の希望です。」
    ゆっくりうなずくジオ
    SE:木の扉が叩かれる音
ジオ「時間のようだ。君の使命を。」
セラ「はい。行ってきます。ジオ博士」
    扉を開け出ていくセラ
    セラがいなくなった部屋で崩れるように座りこみ頭を抱える

    数か月が経過する
ジオ「僕がセラを送り出してから…もう4か月か。あれから戦況は少しだけよくなった。
北方との戦いは優勢。終結のめどが立ったんだ。(傍白)」

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