血の縁散る
血の縁散る
〇登場人物
道木煙造 父親。シングルファーザー。
道木勉夢 息子。大学4年生。
道木夢花 母親。死人。
舞台下手側、煙造が晩酌をしながらテレビで野球中継を観ている。
そこに、風呂上がりの勉夢が登場。
煙造 ……。（勉夢に気付き、）…？おう。上がったか。
勉夢 …うん。
煙造 どうだ？お前も。（ビール缶を傾ける。）…おっと、もう無いな。（冷蔵庫に向かい、新たなビール缶を取り出す。）
勉夢 親父、それくらいにしとけよ。この前の診断も、良くなかったんだろ？
煙造 悪くも無かった。ってことは、まだまだ俺の肝臓は耐えられるってことだ。
勉夢 屁理屈ばっかり言って…
煙造 理屈なだけマシだろ？
勉夢 はぁ…（煙造の反対側の席に座りながら、）勝ってる？
煙造 んぁ？ああ、３点ビハインド。今日は厳しいかもな。
勉夢 その割には機嫌悪くないね。
煙造 板山がホームラン打ったからな。今日のノルマは十分だ。
勉夢 …そっか。
煙造 ……あ、そうだ、さっき俺が聞いたのに…
勉夢 え？
煙造 お前も飲むか？
勉夢 あ…あぁ…遠慮しとくよ…
煙造 何だよ、明日はお前も休みだろ？あれ？バイトだっけか？
勉夢 いや、休みだけど…
煙造 じゃあ1杯くらい付き合え。ほら。（ビール缶を１つ、勉夢に差し出す。）
勉夢 …うん…
煙造 へへ。親父って言う生き物はな、常々自分の息子と酒が飲みたいもんなんだよ。ほれ、乾杯。（自分の缶を大きく近づける形で、乾杯。）……。
勉夢 ……（1口含んで、すぐに缶をテーブルに戻す。）あ…
煙造 うん…？
勉夢 …あ、…いや…
煙造 …はぁ…（テレビを消し、身体を勉夢の方に向き直す。）何だよ、珍しい態度とって。…何かあったのか？困り事か？
勉夢 …いや、…そうじゃ、ないんだけど…
煙造 何だよ、歯切れが悪いなぁ…
勉夢 …ごめん……
煙造 …ふぅ……勉夢。…話してみろ。たった1人の家族じゃねえか。腹割って話そうや。
勉夢 …うん。
煙造 ……。
勉夢 …あのさ、
煙造 おう。
勉夢 ……俺、親父には感謝してるよ。
煙造 …おう。何だ、いきなり予想外だったな。
勉夢 男手1つで俺をここまで育ててくれてさ、大学にも行かせてくれたし…
煙造 バカ言え。親なら当然だっての。
勉夢 …そうかも、だけどさ。でも、…当たり前じゃないよ、普通…ここまで…
煙造 …へッ、言うじゃねえの。（煙草に火を着ける。）
勉夢 （ビールを1口飲んで、）…でさ、…でもさ、
煙造 おう。
勉夢 ……俺達、…血が繋がってないんだろ？
煙造 …………お、（煙草を口からポロリと落とす。）
勉夢 ちょっ…（落ちた煙草を慌てて灰皿に入れながら、）……どうなんだよ、親父。
煙造 ……お前……どこで、それ知って…
勉夢 …この前、親父の吸殻使って、こっそりDNA鑑定したんだよ。
煙造 DNAって…待てよ、お前、自分でやったってことは…前から疑ってたのか…？
勉夢 ……。
煙造 勉夢！
勉夢 小学校の頃さ、…言われたんだよ。…勉夢君は、お父さんとはあんまり似てないねって。隣の席の子に。
煙造 は…？
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