敵は本能寺にナシ!
場面→信長の自室。

信長と光秀 着物(浴衣でも良い)を着用。
信長は刀(おもちゃ)をそばに置いている。

『ナレーション』
「ときは1582年、6月2日。この日、日本の歴史上屈指の大事件『本能寺の変』が起こった。天下統一を目前にした織田信長に対し、家臣の明智光秀が謀反を起こしたのである。京都・本能寺に宿泊中に襲撃を受けた信長は寺に火を放って自害。しかし、どんなに探してもその亡骸は発見されなかった。それもそうだろう。だって、織田信長自身が『本能寺の変』を仕組んだのだからーー。」

上手側に信長が座り、
下手側に光秀が座っている。

信長 扇をパタパタと仰いでからパチンと閉じて喋り出す。

信長「ーーというわけだ。光秀、分かったな?」
光秀「まったく意味が分かりません。信長様、悪い冗談はやめてください。」
信長「だーかーらー。冗談なんかじゃないぞ。」
光秀「エイプリルフールは先月ですよ、乗っかるのが遅すぎますって。」
信長「本気で言ってるんだよ。いいか、光秀。俺を『殺せ。』」
光秀「………いや、無理っす。絶対に無理無理無理。」
信長「何でだよ?殺したいと思うことは今まで何回もあっただろ?」
光秀「ああ、それは数え切れないほど!(満面の笑み)」

信長 立ち上がって光秀を羽交い締めにする。

光秀「痛い痛い痛い痛い!!!」
信長「こんのタコが!調子乗りやがって!」
光秀「あなたが先に吹っかけてきたんでしょう!?」
信長「やっぱりお前は油断も隙もねえな!」

信長 落ち着きを取り戻し、元の位置に戻る。光秀 乱れた着物を直す。

光秀「し、死ぬかと思った…。」
信長「それで、話を戻すけど。あくまで、殺すふりだから。マジでやるなよ。分かった?」
光秀「なーんだ、びっくりした。それならそうと先に言ってくださいよ。」
信長「当たり前だろ、まだ死にたくねえもん。」
光秀「そんな物騒なことをお願いしてくるなんてどうしちゃったんです?あとちょっとで天下を取れるって時に。」

信長 少し間を置いてから話し始める。

信長「俺さ、『織田信長』を引退しようと思ってるんだ。」
光秀「え、あなたアイドルでしたっけ。」
信長「本気で言ってんだよ!もうこれ以上、信長をやっていく自信がなくなったんだよ!!」
光秀「自信って、何を今更…。」
信長「とにかく聞いてくれ。なんと俺、あとちょっとで50歳。めちゃめちゃめでたいだろ。」
光秀「おめでとうございます。やばいことをやり尽くしたわりに、ぜんぜんバチ当たりませんでしたね。」
信長「で、この前、ふと思ったんだ。なんて虚しいだけの人生だったんだろうって。」
光秀「はあ??」
信長「今まで狂ったように戦いばっかしてきたじゃん。温泉に行きたくても、推しのコンサート行きたくても、いつ敵が攻めてくるか分からない。精神的にギリギリでずっと辛かったんだよ。」
光秀「そんなの他の武将たちも同じですよ。みんな、そうやって頑張って我慢しているんです。」
信長「黙れ!俺の辛さは俺だけのものなの!他人のことは関係ないの!」
光秀「面倒くさいゾーンに入ってきたな。」
信長「それに俺、世間からひどく誤解されてるじゃない。血も涙もない恐ろしいやつってイメージがついちゃって!この前なんか、エックスのトレンドに「#信長の悪事バラしていく」が上がってただろ?!知らないうちに大炎上よ!」
光秀「それ、僕がやり始めたんですけどね。」
信長「火元はてめえか!」
光秀「色々バラされてましたよねえ。1番ひどかったのが、敵の頭蓋骨を盃にして酒を飲んだとか飲まなかったとか…。」
信長「なにそれ!?そんなこと一度もやったことないのに!っていうか、それを思いついた奴はどういう育ち方してきたの!?」
光秀「僕もあんまりだと思って、ちゃんと否定しておきましたよ。」
信長「あら、優しいじゃん。」
光秀「あいつは極度の潔癖症だから、そんなことをするはずないと。」
信長「フォローが微妙だな。あと、あいつって言った?」
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