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大人の友情実験室

大人の友情実験室

作・折笠安彦
人　物
熱盛博士（６０）研究者
西園寺響子（４２）熱盛博士の助手
岡本節子（７０）作家
星野葵（７０）女優
中村裕之（６０）会社員＋？
緑風はるか（２７）環境活動家
小笠原ゆり（２６）メンヘラコスプレイヤー

シーン１ ○会議室のような部屋
音楽
　会議机とパイプ椅子が２つ
　その前方にパイプ椅子５脚が置かれている。
　明るめの照明で明転になると、会議室前の椅子に西園寺響子（４２）が座り、バインダーに挟まれた書類を確認している。
西園寺「なかなか来ないわね。ちゃんと来てくれるのかな？すでに４人もキャンセルが入っているし。・・・それにしてもこんな実験、私の研究コンセプトからしたらあり得ない内容なんだけど・・・早くこんな研究所から転職しなきゃ。そうだ、ビビリーチからスカウト来てるかな？」
西園寺、スマホをいじる。
西園寺「・・・ダメかあ。ちっ！何が、登録するだけで驚きのスカウトよ。全然来ないじゃん」
熱盛博士（６０）が入る。
熱盛「西園寺君！」
西園寺、びっくりしてスマホを隠す。
熱盛「なんだ、誰も来てないじゃないか。いったいどうなっているんだ？西園寺君のパッションが足りないんじゃないか？」
西園寺「（一瞬、熱盛を睨み、腕時計を見て）集合時間まであと１５分ですから、そろそろ来るんじゃないですか。お言葉ですが、あまり早く来るのは合理的ではありません」
熱盛「・・・今日はどんな人が来るんだ？」
西園寺「全部で５人です。男性が１名、女性が４名です」
熱盛「なんだ。たったどれだけか？そんなに少なくてはサンプル数不足で、実験にならないんじゃないか？」
西園寺「お言葉ですがドクター、元々は応募してきた方が男性４名、女性が４名の合計８名でした。しかし、そのうち男性４名全員ドタキャンしましたので、急遽別の人に来てもらったんですよ」
熱盛「ドタキャン？」
西園寺「はい。知らないんですか？土壇場でキャンセルすることです」
熱盛「そんなこたあ、わかってるよ。なんで僕のこのパッションな実験をドタキャンするんだと聞いているんだ」
西園寺「知りませんよ。皆さん都合があるでしょうし。それに・・・いえなんでもありません」
熱盛「全く、一般人にはパッションが足りないんだよ。西園寺君、僕はね、この実験に研究者人生を賭けているんだよ。わかってくれるだろう？パッションだよ、パッション」
西園寺「・・・お言葉ですがドクター、この実験が研究者人生を賭けるほどの価値があるとは思えません。それに、ドクターの実験計画は、レイズ最適化理論、及びタグチメソッドからみて成りたってません。仮に計画どおりの結果が得られたとしても、論文の査読で落ちます。（小声で）夢の永久機関の研究よりはマシだけどね」
熱盛「うん？何か言ったか？夢の永久機関の研究よりはマシって聞こえたんだけど」
西園寺「いえいえ、空耳アワーです」
熱盛「西園寺君、君は僕の理解者だと思っていたんだけどね。僕はね、ほら、東大の大学院を修了しているだろ？僕はその才能を活かした研究を数えきれないほどやってきたんだ。たまにはこういう肩が凝らない研究も良いじゃないか。それに・・・」
西園寺「（遮り）ドクター、そろそろ皆さん来ちゃいますよ。部屋にひっこんでてください」
熱盛「ひっこんでてください？君ねえ、それが助手の口のきき方かね？」
西園寺「いけませんか？ではそうですね・・・（出口を指し）ハウス！」
熱盛「ハウス？僕は犬か？」
西園寺「犬ではありませんよ。部屋で待機しててくださいという意味です。実験計画書には、皆さんが来たら威厳をもって登場するって書いてありますよ。顔を合わせたらまずいですよ、ほらハウス！」
熱盛「おお、そうだった。戻らなきゃ」
　熱盛、退場。
　西園寺、椅子に座り、書類を見る。
西園寺「（腕時計を見て）遅いわね。やはり、怪しいと思って敬遠したのかしら」

シーン２
　登場音楽。緑風はるか（２７）が入る。天井の照明や部屋の温度を確かめる風にして、不満そうな表情を浮かべる。
　西園寺が怪訝そうに、
西園寺「こんにちは。実験参加者の方ですか？・・・どうかされましたか？」
緑風「あのー。私思うんですけど、ここの照明、明るすぎると思います。それと、ここのエアコン、今日の気温じゃいらないと思います。不必要な電力消費によるCO2排出により、近い将来地球温暖化で生きていけなくなるんです。温暖化に対する意識を高めて、できることから行動しましょうよ」
西園寺「え？・・・ああ、そうですね。すみません、意識が低くて。お名前をお伺いできますか？」
緑風「緑風はるかです。何か実験をするって聞いてきたんですが、それってSDG’sに関することなんですか？」
西園寺「緑風はるかさんですね。ようこそいらっしゃいました。実験の詳細は後ほど説明があります。どうぞ、おかけください」
緑風「私思うんですけど、この実験を通じて皆さんの環境に対する意識が高まると、とっても素晴らしいことだと思うんです。実験の成功に私の知識と経験が役に立つと思います。何でも聞いてくださいね。レッツSDG'sです！」
西園寺「・・・（小声で）何、この環境オタク。面倒臭！。でもこの場合、あまり逆らわない方が論理的ね（戻り）はい、わかりました。一応、照明を１５%ほど暗くして、エアコンも止めますね」
緑風「本当ですか！ありがとうございます。私思うんですけど、感動しました」

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