刺突侍
刺突侍                            山上晃輝
 
  登場人物一覧
 尼宮燐之助(あまみや りんのすけ)→『刺突侍』の名を持つ浪人の侍。その名の通り、刀で斬るのではなく、刺突を用いて相手を仕留める。旧姓は月舘。
 月舘秋吉(つきだて あきよし)→燐之助の父。女に対して極悪非道な大名に、痺れを切らし、天守で抜刀したことで幕府に打ち首を命じられる。
 阿久大 名君(あくだい みょうきみ)→女を商売道具としか見ておらず、綺麗な女性を見ては、遊郭の売女に勧誘し、そこで儲けた金を私利私欲のために使う悪人。
 衛絶(えいたつ)→名君に仕える付き人。剣術に長けた強者。かつて主君が急死したことで行き場を失くし、後追いをしようとしたところを名君に拾われる。衛絶にとって恩人である名君の護衛を決意する。
 椿(つばき)→地域一の美女と名高く、秋吉と結婚する。
 遊郭の主→江戸で遊郭を運営している。名君のことが嫌い。
 ロラン・フォート→フランス人でフェンシングの名手。日本語が上手い。
 百姓は1と2がメイン、それ以外の百姓は町人と兼役可
 武士と役人は兼役可 武士2と武士�エは同じ役者が望ましい



刺突侍

 荒廃した土地(田んぼ) ボロボロの身なりをした百姓二人

百姓1「おい!大変だ!幕府がまた年貢を上げるって!」
百姓2「は?またかよ!もうこれで何回目だよ…」
百姓1「しかも、無能で何にもしてない大名が、昇給するらしいぞ!でもな、その大名は」
百姓2「無能な大名はいい! …いや、よくはねぇけど!それよりも、年貢だ。今回は、どれくらい上がるんだよ?」
百姓1「取れた米の、半分持っていかれる」
百姓2「半分!?ただでさえ凶作続きで米どころか、野菜も全然だってのに、その半分も持っていかれたら、また大勢が餓死するじゃねぇか!」
百姓1「間違いなく、また飢饉が流行るだろうなぁ。それに加えて、幕府は新しい税の導入まで考えているらしい。」
百姓2「まだ俺たちから搾り取るつもりなのかよ…」
百姓1「腹減ったなぁ…」
百姓2「ああ、腹減った…」
 少し間
百姓1「そうだ!!」
百姓2「どうした!?」
百姓1「一揆だよ!俺たち百姓、なんなら村の役人たちも皆かき集めて、幕府に一揆を起こさないか!?」
百姓2「お前…天才か?どうした?腹減りすぎて逆に頭良くなったのか?」
百姓1「…」
 暗転 時計の音などで時間の経過を表したい
 明転(場所同じ)

百姓1「しかし困った…」
百姓2「ああ、まったくだ。」
百姓1&2「戦力が足らん!」
百姓1「こないだの飢饉が痛手だったなぁ…」
百姓2「どれだけ頑張ってもせいぜい二百人を集めるのが限界だな。」
百姓2「天守にはざっと百ほどの武士は堅いだろうか。仮に、数で勝っているとしても、百姓が突破するのは厳しい。」
百姓1「それにあの大名の天守には腕のいい付き人がいる。となれば、そいつと互角に渡り合える者も欲しいが…」
百姓2「ろくに飯も食えてない俺たちじゃ、到底な…」
百姓1&2「うーん…」
百姓1「そうだ!確か町に、伝説の浪人がいるって聞いたことがある。大名たちから米を盗んでは、追いかけてきた武士を刺突で殺すっていう『刺突侍』だよ!」
百姓2「その伝説なら俺も聞いたことがある!やっぱり今日、頭冴えてんな!?」
百姓1「一か八か、交渉する価値はあるかもな。」
百姓2「そうとなれば、一刻も早く町へ行こう!」
 暗転
 明転
   町
百姓2「いざ町へ来たのはいいが、本当にこんな夜に居るもんなのか?」
百姓1「噂だと、米泥棒はいつも決まって夜に出るんだとよ。」
百姓2「来て言うのもなんだが、本当に強いのか不安になってきたぜ。なんせ、泥棒なんだろ?」
百姓1「馬鹿。肝心なのはそっちじゃね―よ。すげぇのは、幕府からの追跡を、何度も返り討ちにしてるところさ」
百姓2「大体の伝説ってのは、大袈裟に作られているものなんだよ。」町人二人入って
町人1「聞いたか?また刺突侍が幕府の蔵から米盗ったって」
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