相馬杜宇

○登場人物
日岡信二(ひおかしんじ)四三歳。日岡スポーツ店主。元石野田東高校野球部キャプテン。
米田忠徳(よねだただのり)四三歳。米田建設野球部監督。元殿村学園野球部エース。
中園雅人(なかぞのまさと)四三歳。四津川高校野球部顧問。元石野田東高校野球部。
登坂信人(とさかのぶと) 三四歳。日岡スポーツ従業員。
小谷寧々(こたにねね)二二歳。日岡の彼女。米田建設野球部スタッフ。
大森和歌子(おおもりわかこ)四三歳。日岡の元妻。看護師。
鮫川正義(さめかわまさよし)一八歳。石野田東高校ピッチャー。
菊竹雄大(きくたけゆうだい)二九歳。米田建設野球部。ピッチャー。
鈴木ダグラス(すずきだぐらす)一八歳。米田べースボールクラブ。ピッチャー。
ヒオカシンジ 一八歳。高校時代の日岡。
※小谷と大森は一人が演じる。
※鮫川と菊竹と鈴木は一人が演じる。



        ―0―
        高校野球県大会決勝。
        応援が最高潮に達している。
ヒオカがセカンドの守備についている。
現在九回裏ツーアウト二、三塁。ヒオカの高校(石野田東)が二対一でリードしている。
ヒオカ、腕で汗を拭う。拭っても拭っても汗が吹きだしてくる。
        まもなく金属バットの打球音。
ヒオカのところにゴロが飛んで来る。
ヒオカ、後逸する。
        相手チームの歓声。
試合終了を告げるサイレン。
ヒオカ、天を仰ぐ。



        ―1―
        二十五年後。
        八月のある日の午後。
        米田建設野球部の事務所。グラウンドが隣接している。
ユニフォーム姿の米田が床に転がったボールを拾いながら入ってくる。そのうちの一つはさきほどヒオカが後逸したボールである。
        続いて日岡が野球ボールの箱をいっぱいに積んだ台車を押しながら入って        くる。

日岡   すいません。
米田   こちらこそ、暑い中。(ボールを手渡し)大変だったでしょ、積むだけでも。
日岡   若いのに頼んだので。
米田   若いの?
日岡   入ったんです、先月。
米田   良かったねえ。これからは練習も見に来られるじゃない。
日岡   たまには……
米田   来てよ。ちゃんと活用してるところ見てもらいたいし。
日岡   ありがとうございます。(と言って汗を拭く)
米田   ああ、休んで休んで。
日岡   失礼します。

        日岡と米田はソファーに腰を下ろす。

米田   それ何とかならない?
日岡   はい?
米田   フランクにいこうよ、元チームメイトじゃない。
日岡   城南アトムズですか。
米田   強かったよねえ。リトルリーグじゃ勝負にならないって言って、中学生と試合したりしてさ。
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