ワンステップ
 「ワンステップ」
姉・礼子を交通事故で失ってしまった真理奈。そんなある日、真理奈の前に幽霊になった礼子が現れる。しかし姉の死を未だ受け入れられず、心が不安定な真理奈は友達である美鈴にも辛く当たってしまう。誰にも言えないそれぞれの心の内。互いと自分を受け入れて乗り越えた先にあるのは今より大人になれた自分。【女3】

登場人物
・白井 真理奈  高校一年生 元々はハキハキとしていて元気な女子だったが、
         姉の死が原因で、暗く無気力になってしまった。

・白井 礼子   高校二年生 真理子の姉。妹思いの明るい人柄。
         口も達者でふざけていると思われがちだが意外としっかり者。
         交通事故で死亡しており、現在は幽霊に。

・新島 美鈴  真理奈の同級生であり、親友。真面目で、曲がったことが大嫌い。
        世話好きな面もあるが少々お節介が過ぎる。
   場面1  『真理奈の独白』
     (ステージの中心に真理奈が一人)
真理奈  私、白井真理奈は今から4か月前に…お姉ちゃんを失いました。交通事故でした。鬱陶しい姉が居なくなって清々した…ワケではなく、私の心には、どこかぽっかり穴が開いたような気分でした。食事には味がなく、景色は灰色に見える。友達からは、性格も変わったと心配されます。でも最近、そんな日々が急に騒がしくなりました。お姉ちゃんが…(声のトーンが明るくなる)お姉ちゃんが帰ってきたんです。 私にしか見えてないみたいだけど、確かにそこに居るんです。

  場面2   『真理奈の部屋』
      (礼子が寝ている。 側で真理奈が仁王立ちしている)
真理奈  …お姉ちゃん。
礼子   かぁ…くぅ…んふぅ(寝返りを打つ)
真理奈  お姉ちゃんってば(呆れた声で)
礼子   ん…後二分…えへへぇ(だらけた感じ)
真理奈  起きなさい礼子!(少し低い声で怒鳴る)
     (礼子は体をビクッとさせ、飛び起きる。辺りを見渡して真理奈を
      不満げな顔で見る。)
礼子   ちょっと真理奈、お母さんのマネするの止めてよ。心臓飛び出るかと思ったでしょ、もう動いてないけど。(胸に手を当てる)
真理奈  お姉ちゃんがいつまでも寝てるのが悪い。大体さ、幽霊になってまで戻ってきたのに、することが寝るだけって何よ。暇人? 暇幽霊?
礼子   まぁまぁまぁまぁ…(真理奈にちょこちょこと近寄って両肩を掴む)
真理奈  近い!
礼子   そうカッカしないでよ、マリちゃぁん。こうやってさ、わざわざ大変な手続して帰ってきたのよ。この世に滞在する為のパスポート発行したり、三途の川を渡る船のチケット買ったり…ホントに長かったんだから!だから~もうちょっと~喜んでくれてもいいんじゃない?
真理奈  そういうのウザイから。(礼子の手を払う) 私もう学校行くからね。
     (近くにあったカバンを背負う)
礼子   えぇ…もうちょっと話そうよ。お姉ちゃん真理奈が居ない間暇なのよぉ。
真理奈  (ため息をつく)…で、話すって何を?
礼子   ん~(少し考えて)恋バナとかッ!生前あんまり真理奈のそういった相談とか聞いてあげられなかったからさ。それともあの世の話してあげよっか。知ってた? あの世にもナンパしてくる男っているのよ!
    (早歩きで舞台袖に引っ込む真理奈)
礼子   あぁちょっと、真理奈、マリちゃぁ~ん!?
    (少しだけ戻ってきた真理奈)
真理奈 言っとくけどお姉ちゃん。私が居ない間に部屋の中漁ったり勝手に日記見てたりしたら、部屋に盛り塩置くからね。
    (今度こそ舞台袖に引っ込む真理奈)
礼子  …あ~あ、すっかり思春期になっちゃって。もっと甘えんぼなハズなんだけど。(部屋を見渡す)さて、部屋でも漁るか。
 
場面3  「教室」
    (席についている真理奈のもとへ美鈴が近づく)
美鈴  ちょっと真理奈、またやられたんでしょ!(怒り気味)
真理奈 (困惑して)や、やられたって…何を?
美鈴  お金よ。またカツアゲされたんでしょ、あの感じ悪い上級生から。何でちゃんとハッキリ「嫌だ」って言えないの?
真理奈 カツアゲなんかじゃないよ美鈴。私はただ、お金を貸してるだけだから。
美鈴  (呆れて)…それでお金返ってきたことある?
真理奈 …まだ…ないね。
美鈴  それじゃぁカツアゲと変わりないじゃない! ダメだよ。大事なお金でしょ。
真理奈 ウン…そうだね…ハハ(力なく笑う)
美鈴  呆れた…真理奈、なんか変わっちゃったね。
真理奈 何言ってるのよ美鈴。私は何も変わってないよ。いつも通りいつもどーり!
美鈴  …やっぱりお姉さんの事が?
真理奈 まさか! 流石にもう…。そもそもお姉ちゃんの事そこまで…好きじゃなかったし。
美鈴  そうなの? あんなに良い人なのに。ほら覚えてる? ちっちゃい頃、二人で隣町の夏祭りに行ったときのこと。
真理奈 あぁ、調子に乗って門限破った上に帰り道分からなくて迷子になったやつね。
 美鈴  そうそう! あの時のお姉さん格好良かったなぁ。泣いてる私たち慰めて、
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