星の王女さま
『星の王女さま』
僕はこれまで、あの話を誰にもしたことは無かった。
王女 「ごめんあそばせ」
飛行士 「えっ?」
彼女に声を掛けられた時、僕は、驚きのあまり腰を抜かしてしまった。
もし君がその時の僕を見たら、思わず笑い出してしまうだろう。
王女 「あら…大丈夫?」
飛行士 「あ…ああ、…うん…」
僕の目の前に立っていたのは、少し背の低い女の子。
とても可愛らしい女の子。
まるで…王女様のような姿をした少女だった。
王女 「あなた、ここで何をしているのかしら?」
飛行士 「僕…僕は、飛行機の手入れをしていたんだよ」
王女 「ひこうき?」
飛行士 「これのことさ」
僕は、彼女に僕の大切な宝物を見せびらかしてあげた。
王女 「……これは、何をする道具なの?」
飛行士 「空を飛ぶ乗り物さ」
王女 「空を?」
飛行士 「乗せてあげようか?」
王女 「遠慮しておくわ」
何だい、可愛げが無いな。
飛行士 「…ねえ、君は」
王女 「ねえ、私、王子様を探しているの」
飛行士 「え」
王女 「あなた、知らないかしら」
飛行士 「知ってるも何も…君は…彼のことを知っているのかい?」
王女 「ええ、もちろん。知ってるわ」
飛行士 「本当に?」
王女 「本当よ」
飛行士 「それじゃあ…彼は、君のことを知っているのかい?」
王女 「それは…」
飛行士 「……」
王女 「…知らないわ」
飛行士 「そうだろうね」
王女 「何よ」
彼女は少しむっとした表情で、僕に1歩、近づいた。
王女 「どうしてあなたが知ったような口を利くのかしら」
飛行士 「それは…」
僕は、少し躊躇った。
飛行士 「君が…彼の話の中に、1度も出てきていなかったからさ」
王女 「……」
彼女は1歩、…もう1歩、後ずさってしまった。
王女 「何よ、それ…」
彼女は、酷く悲しそうな顔になった。
王女 「何よ、それ…」
彼女はもう1度呟いた。
とても小さな声だった。
飛行士 「君は……本当に、彼のことを知っているのかい?」
王女 「……もちろんよ」
飛行士 「…じゃあ…ここに来たのも、偶然じゃないんだね?」
王女 「…もちろんよ」
飛行士 「そうか…大変だったろう」
王女 「……」
飛行士 「良かったら…僕に話してくれないかな」
彼女はゆっくりと頷き、くるりと背を向けた。
それから、腕をゴシゴシと目に擦り当て、大きく息を吐くと、漸く彼女は僕に向き直った。
王女 「良いわよ、話してあげる」
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