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カゲロウたち

【登場人物】
　管理人　　蜉蝣荘に住民を受け入れてきたが、「本当に受け入れるためには？」と悩んだ結果、眠
　りについてしまった。
　マリー　住民。目まぐるしく変わる世の中についていけないマイペースな女性。世話好きなため、
　蜉蝣荘のお母さんポジション。蜉蝣荘に一番長く住んでいる。
　マエノ　住民。新しい学説の登場により評価が一変し、学会に居場所がなくなってしまった。過
　去の栄光にすがっている、ふてくされたオジサン。
　リョウ　蜉蝣荘新入り住民。特殊な美的センスの持ち主。蜉蝣荘にきたのは、〈仲間〉を見つける
　ため。自分の美を追求するためには多少道をはずれてしまうこともある。
　ヒソカ　住民。特殊な美的センスを胸のうちにしまう芸術家。見た目や性格はそんなに変わって
　いるように見えない。
　クゥ　　住民。人間関係に疲れきってすべてを捨てたが、ひとりぼっちは寂しいので蜉蝣荘にい
　る。今は空だが、いつか〈自分〉で満たされたい。
　アラタ　元住民。新しい学説を発表し、学会の第一人者になった博士。マエノに一方的に恨まれ
　ている。
　ミツ　　元住民。〈自分〉を確立し、蜉蝣荘を出て生活しはじめた。黒衣をまとうと強くなれる気
　がしている。
　郵便局員　街の郵便局員。真面目だが、少しそそっかしい。
　医者　　街の医者。金儲けが好き。　
　大家　　蜉蝣荘の大家。管理人に何かあれば蜉蝣荘を取り壊すつもりだ。
　
　過去の蜉蝣荘のリビング。舞台中央に後ろ向きのソファー、机、机の上にカゴ、カゴの下に手紙。
　ソファーに管理人・リョウが座っている。
　
　管理人　ここでは、私がどんな人でもすべてを受け入れます。
　リョウ　ほんとに俺みたいなのを受け入れてもいいわけ？
　管理人　ええ。それが私の決意ですから。
　リョウ　俺がここの住民を傷つけても？
　管理人　受け入れると決めましたから。
　リョウ　それは、仮にそういうことが起こっても、後悔や悲しみまで受け入れるってこと？。
　管理人　 ……ええ。
　リョウ　ほんとにそんなことができるのか疑問だけど、（立ち上がり）ま、ここに住めるんならい
　いや。面談はおしまいでいい？
　管理人　ええ。面談は以上です。
　
　　　　　リョウ、退場。
　
　管理人　これで、いい。
　
　　　　　管理人、ソファーに崩れ落ちるように寝転ぶ。
　
　　　　※※※
　
　蜉蝣荘のリビング。リビングから、玄関へ通じる廊下、寮に通じる廊下、台所と風呂など共用スペースに通じる廊下が伸びている。マリー・マエノ・リョウ・ヒソカ・クゥ、それぞれのタイミングで寮から登場。
　
　マリー　おはようございます、管理人さん──あら？　潜ってる。潜るって言ってたっけ。
　マエノ　おはよう。
　マリー　（唇に人差し指を当て、小声で）おはようございます。
　マエノ　ああ、また。管理人さんも大変だ。
　ヒソカ　おはようござ──（二人の様子を見て）あ、了解です。
　クゥ　　（入ってくると同時に察して）あ、はい。
　マエノ　さすがみんな察しがよかったな。最近潜ることも多かったから。
　ヒソカ　考えることが多いんでしょう。
　マリー　そのうち目が覚めるでしょうから、今のうちにお掃除しちゃいましょうか。
　クゥ　　うん。そぅっと……。
　リョウ　（大声で）おはようございまーす！
　住民達　しーっ！
　クゥ　　起こしちゃった？
　ヒソカ　（管理人を見て）セーフ！　です。
　リョウ　え、なに？

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