きりきりまい
【登場人物】
桐谷未来:過去を捨てて新しい自分に生まれ変わりたいと考えている、上京したての大学一年生。
     過去いじめに加担してしまったことがトラウマ。
杉田 舞:過去の自分を大事にしたい大学四年生。
エノキ:縁切り神社に祀られている存在。

集合的意識 ※四人以上。依頼人一〜四と兼ねてもよい。

依頼人一:黒歴史に悩む。
依頼人二:家庭に悩む。
依頼人三:学校で孤立している。
依頼人四:過去に桐谷がいじめてしまった相手。いじめがトラウマになっている。

【一】
舞台上には、集合的意識たちがいる。考えが浮かんだり消えたりするよう
に、彼らも暗闇に浮かんだり消えたりする。集合的意識たちが考えている
のを他所に、桐谷が縁切り神社を探して舞台奥から前進してくる。

集合的意識  縁があったら、会いましょう。
集合的意識  って言って、実際に会えるのはどれくらいかしら。
集合的意識  それでも、言ってしまうんだ。
集合的意識  縁があったら、会いましょう。
集合的意識  それって、臆病だから?
集合的意識  えーんえーん。
集合的意識  と人が泣くのは、寂しいから。
集合的意識  いや、首が締まっているから。
集合的意識  繋がりの延長線上でがんじがらめになって。
集合的意識  人はみな、えんじゃ。
集合的意識  姿形を変えて、繋がっていくもの。
集合的意識  エントロピー上昇中。

    桐谷、縁切り神社に到着し、本坪鈴を鳴らす。
   
集合的意識たち がらんがらん。

    集合的意識たち、退場。

桐谷   あ、お賽銭入れるの忘れてた。えっと、五円は、ご縁がありますようにだ
    からダメで……そうだ、偶数にしておこう。別れるから。(お賽銭を入れて、
    二礼)

    桐谷が二拍手。
    エノキの世界が開きはじめる。

桐谷   新しい僕になるために、過去と縁が切れますように。

    エノキの世界が露わになる。そこには不思議な花々で満ち溢れ、そこかし
    こに糸が伸びている。目も眩むようなぐちゃぐちゃな色彩で構成されたそ
の世界は、この世の全ての縁が繋がっている場所。そして、その中央に座しているのがこの場所を管理する存在の一つであるエノキである。エノキの体には髪の毛や帯などありとあらゆる糸状のものが絡まっており、その周りには集合的意識たちが手足を繋ぎあって絡まっている。
    桐谷、目を開けて慄く。

エノキ   お客人。
桐谷   ……。
エノキ   まずは名乗るのが礼儀というもの。
桐谷   あ、え……。
集合的意識  一に名前。
集合的意識  二に住所。
集合的意識  三に年齢。
集合的意識  願い事はそれから。
エノキ   さあ名乗れ。
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