運命の死神
運命の死神
〇登場人物
世良 医者。
花藤 親族。
魁魑 死神。
1.
手術前。薄暗い照明。不安そうにしている花藤に、世良が優しく話しかける。
花藤 先生…先生…どうか…
世良 ええ。ええ、もちろんですとも…
花藤 あの子の命を…どうか…
世良 はい、もちろんです。花藤さん、そう不安に思わないでください。娘さんの命は、私が必ず助けます。この私の命に誓って。
暗転。
2.
明転。花藤、手術室前のベンチに座って不安そうに待っている。
花藤 …ああ……どうか…神様……
魁魑、ヒョコっと登場し、花藤の周りをうろつき始める。
花藤 …?
魁魑 はぁー…お、(花藤と目が合い、)どうもっス。
花藤 ……ど、…どうも…?
魁魑 ……(また無言でうろつき始める。)
花藤 …あ、…あの、
魁魑 はい?
花藤 あなたは…?
魁魑 え?…(軽く笑って、)いやいや、…え?
花藤 …え?
魁魑 お宅が魁魑のこと呼んだんでしょうよ。
花藤 …はい?…カイチ…?
魁魑 おっと、申し遅れました。初めまして、魁魑っス。訓読みで「さきがけ」の「魁」に、「魑魅魍魎」の「魑」。
花藤 …?はぁ…
魁魑 そんでもって、神様です。
花藤 はぁ……はぁ!?(ベンチから立ち上がる。)
魁魑 だから、神様です。
花藤 ……何。…言ってるんですか?
魁魑 …(軽く笑い、)ははは、…いやいやいやぁ、お宅がさっき呼んだんじゃないっスか、「神様…」って。あれでわざわざ呼ばれてやって来たんスよ。
花藤 え…ほ、本当ですか…?
魁魑 まぁ〜信じられないのも無理はないっスね〜…そんじゃあ…ほいっ!
魁魑が花藤に何かをかける仕草をすると、花藤がそのままの姿勢で硬直する。
魁魑 しばらく振りにやったけど上手くいったな〜…ほいやっ!
魁魑が再び同じ仕草をすると、花藤が動き出す。
花藤 (軽く咳き込んで、)はぁ…はぁ…い、…今のは…?
魁魑 魁魑の力っス。どうっスか?ビックリしたでしょ?
花藤 ……まぁ…
魁魑 信じてもらえました?
花藤 …はい……本当に、神様なんですね…?
魁魑 そうっス。
花藤 本当なんですね…?
魁魑 神は嘘を吐きません。
花藤 じゃあ…娘の命を救ってもらえるんでしょうか…?
魁魑 それは無理っス。
花藤 え…?
魁魑 だって魁魑は…(徐にベンチに座る。)
花藤 …?
魁魑 神は神でも、…死神っスから☆
花藤 ……は…?
魁魑 死神ですよ、死神。「死」を司る「神」の「死神」。
花藤 ……いや…は?
魁魑 だから、ハッキリ言って、娘さんのことは救う気無いっス。
花藤 ……え…じゃあ…娘の命を奪いに来た…ってことですか…?
1/8
面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種
Windows
Macintosh
E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。