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波が聞こえる世界で

「波が聞こえる世界で」
　　　　　　　　作　菅原悠人

〇登場人物
　・佐藤直人（サトウナオト）
　・小林歩（コバヤシアユム）

　波の音がする。
　小林は舞台中央で体育座りをしている。
　小林は上を見る。

小林　直人。

　暗転。
　波の音、フェードアウト。

　明転。
　佐藤と小林は漫画を読みながら寝そべっている。

佐藤　暇だ。
小林　…‥。
佐藤　それ面白い？
小林　別に。
佐藤　じゃあ何で読んでんの？
小林　暇だから。
佐藤　暇だよな～。俺たちこんなことしてていいのかな？
小林　どういうこと？
佐藤　中学最後の夏休みじゃん？なんかこうワクワクと言うさ、
なんというか思い出作りたくない？
小林　作りたくない。
佐藤　はー、歩は冷たいよな。こういう時。
小林　じゃあさ、思い出ってなに？
佐藤　えー、思い出と言えばあれだよあれ。あれ、思い出ってなに？
小林　思い出は思い出だろ。
佐藤　分かるけど、どういう意味？
小林　思い出って言うのは一番記憶に残ってることじゃない？
佐藤　俺だったらなに？
小林　自分で考えろよ。
佐藤　昔さ、カエル飼ってたんだよ。
小林　へー。
佐藤　意外にカエルって長生きでさ、５・６年は生きんだよ。
それでずっと狭い部屋の中だと可哀そうだと思ってさ。外に返したんだよ。
だから、カエルは返した。カエルはカエル。

　間。

佐藤　な？
小林　は？
佐藤　だからさ、こんなつまんないとこから抜け出してどっか行こうよ。
小林　どっかってどこ？
佐藤　世界の果てとか？
小林　なにそれ。
佐藤　俺さ、なんか疲れたんだよね。部活引退してさ、遊ぼ―っと思ったら皆なんか、
　　　受験モードって言うの？なんか置いて行かれてる気がして。
小林　あー、それはあるかも。
佐藤　だろ？
小林　阿部さ、関高受けるんだって。
佐藤　関高ってめっちゃ頭良いとこ？
小林　そう。
佐藤　あいつ行けんの？いつも赤点だったじゃん。

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