フナコ☆ビッグバン
フナコ☆ビッグバン
その1 はじまりはいつも雨。
★ 雨の音。暗めの舞台に陰気なフナコが浮かび上がる。傘をさしている。
フナコ 私は雨が好きです。どんよりとした雨雲とジメジメした空気は、
私を安心させます。ここにいていいんだよ、ここがあなたの居場所だよ。
壁を這うかたつむりが、そう語りかけてくれているような気がして・・・
雨は私を癒します。
晴れている日は苦手です。こんなにいいお天気なのに、家に閉じこもって
いていいのだろうか。そんな焦燥感にさいなまれ、思わず玄関のドアを
開ける私に容赦なくふりそそぐ、眩しすぎる太陽の光。目がくらみます。
そして私には・・・特に行きたいところもないのです。
それに気づかされ、開きかけたドアを静かに閉め部屋に戻ると、カーテンを
引いて、読みかけのBL本の続きを読み始めるのです。
晴れている日は苦手です。
★ 少し歩き、立ち止まる。
フナコ 申し遅れました。私、フナコといいます。田中フナコ。両親が、
フナのようにどこでもたくましく生きてほしいという願いをこめて、
この名をつけたそうです。
★ 少し歩き、立ち止まる。
フナコ ・・・なぜ、フナだったのでしょう。地球上にたくましい生きものは
くさるほどいるでしょうに、なぜ、フナをチョイスしたのでしょう。
理解に苦しみます。
・・・おとなしい性格とこの名前のせいで、子供時代はいじめられっこでした。
★ 歩く。止まる。
フナコ そんな風にわたしは、この町、ドロ沼町で生まれ、ドロ沼町で育ち、
ドロ沼につかり続けて、地味で生臭い女に成長しました。
そして・・・今も結局、この町の会社に勤めています。
正社員ではありません。契約社員です。
仕事は嫌ではありませんが、会社は好きになれません。
それでも毎日会社に行く。それが大人です。それが人生です。
それが・・・私の人生です。
★ 雨の音、強くなる。
★ 暗転。
★ 雨の音、消える。照明つく。
★ フナコ、バス停でバスを待っている。文庫本を読んでいる。
そこへ、派手な女の格好をした男のような人物(マモル)がやってきて、
フナコの隣へ立つ。
フナコ、気づいてふと隣を見てぎょっとして固まる。目が合う。
フナコあわてて目をそらす。
マモル 何よ。
1/29
面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種
Windows
Macintosh
E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。