眠り屋の子守唄
登場人物 ウィル......19歳、男性。眠れない青年。とある事情があって家を出て、最近この街にやってきた。 リープ......夜な夜なテントを張り、「眠り屋」を営む不思議で美しい女性。25歳くらいの見た目をし ている。 トウミ......28歳男性。飄々としている不思議な男。何かとウィルのことを気にかけてくれる。 ランレイ......25歳女性。怪異を専門に扱う「グアイ研究組織『クレムツ』」の捕獲班。横暴な言動 で、怪異を強く恨む。双剣を使って戦う。 シア......21歳男性。「グアイ研究組織『クレムツ』」の捕獲班でランレイの部下。普段は気が弱く、 ランレイの尻に敷かれてるが武器の槍を持つと性格が豹変する。 レム......30歳くらいの見た目をした男性。リープの客のようだが......?


通行人 老人(声のみ) 男1
男2
影1
影2


(真夜中の街。広間の片隅、紺色の小さなテントの前にテントと同じ色のドレスを着た美しい女性 が呼び込みをしている)
リープ 眠れぬ方はいませんか......闇に包まれているこの世界で......眠れぬ方はいませんか ......
(テントの前をウィルが通る。リープの呼び込みに足を止める) ウィル ......
リープ あらあら、こんばんは。あなたはこの声に導かれたのですか?それともラベンダーの香 りに......?
ウィル え、あ......えっと......
リープ まあどちらでも構わないのだけど。私は眠り屋。
ウィル 眠り屋......?
リープ 眠れぬ貴方にひとときの癒しの時間を与えます。さあ、まずはこのラベンダーの香りに 身を預けて。眠りに導くのは、子守唄がいいですか?それとも物語?
ウィル えっと......じゃあ、子守唄? リープ わかりました。それでは準備しましょう。今夜はよく眠れると良いですね。

(リープがウィルをテントに引き込む。中から音楽が聞こえ、再びリープが外に出てくる。歌)
(歌)『澄んだ夜 お星様も笑ってる  さあ坊や 寝所に入り休みましょう  薫衣草を香らせて  今日の記憶が僕を追う  心ゆるびに眠りなさい  眠れ眠れ良い夢を  美しい世界が待っている  こわい夢でも大丈夫  全部私が食べるから』
(翌日。ウィルの部屋。ベットでぐっすりと眠っているところがばっと起き上がる)
ウィル えっと......ここは......あれ。
ウィル 昨日のは......夢?
(ふと枕元に何かあることに気がつく。手に取るとそれは紫色のポプリだった。匂いを嗅いでみる とラベンダーの香りがした)
ウィル ラベンダーの香り......?やっぱり夢じゃなかったのか?......ラベンダー......あの人は 一体何者だったんだ?
ウィル ...... ウィル また、会いたいな......
(夜の街。ウィルが何かを探している。昨夜のテントを探しているようだ。テントとそこに立つリープ を見つける)
ウィル あ...... リープ あ。あなたは、昨日の。 ウィル ど、どうも。 リープ 昨夜はよく眠れましたか?

ウィル はい、おかげさまで。あんなに良く寝たのは久しぶりで。
リープ それは良かったです。それなのに......今日もいらしたんですか?
ウィル え、あ、その......
リープ 一晩眠れただけで、翌日も眠れるようになる......とは限りませんもんね。お入りくださ い。昨夜は子守唄でしたので......物語がいいですか?
ウィル あ、えっと......子守唄がいいです。あの......あなたの歌声、とても素敵だったので。 リープ ......そうですか。では、どうぞ。
(リープとウィルがテントへと入る。それと入れ替わるように軍服のようなものを着た男女2人...... シアとランレイ組が舞台袖からやってくる)
シア  ねえ?
ランレイ ......
シア  ちょっと、ランレイ?
ランレイ ちっ。なんだよ。
シア  おいてかないでよ。
ランレイ あ? シア  流石の僕も、君のペースには追いつけないの、何度も言ってるでしょ? ランレイ 情けねえな。それでも「グアイ」退治専門家かよ。 シア  はあ。ちょっと
ランレイ な、なんだよ。
シア  いつも言ってるでしょ?僕らの仕事はグアイ、つまり怪異の捕獲。
ランレイ ......
シア  人々の生活を脅かす彼らの生態を研究し、対処法を見つける。そうして人々の生活を 守ることこそ、僕らの使命なんだよ?
ランレイ わ、わーってるって。オレが何年この仕事してると思ってんだ。 シア  分かってないから言ってるんでしょ?ランレイはすぐグアイ倒しちゃうから。 ランレイ 時々ならいいだろ? シア  時々でもダメなの......グアイを恨む君の気持ちもわからなくはないけど。

ランレイ ......あいつらは憎い敵だ。 シア  ......知ってるよ。でも君が「クレムツ」に所属している以上、グアイは捕獲しなきゃならな
いんだ。
ランレイ ......わーったよ。次から気をつける。
シア  ほんとかなあ......
ランレイ それよりも、本当にこんな街中にグアイなんているのか?
シア  情報提供があったらしくてね。上からは間違いのない情報だから、としか言われてない けど。
ランレイ あいつらも信用ならねえからな...... シア  まあまあ。「火のないところに煙は立たない」って言うでしょ。一通り調べてみよう。 ランレイ しゃーない。仕事しますかね。
シア  お願いします。
ランレイ そういやあ、あいつはどこ行ったんだ?
シア  さあ? ランレイ なぜかあいつもこの街にいるんだろ?まじで勘弁して欲しいんだけど...... シア  あの人は規律が多いクレムツの中でも自由な人だからね...... ランレイ あいつだけ特別扱いされてんのほんっとむかつく。一応オレの方が先輩なんだけど。 シア  まずはもっと上層部に気に入られる行動を心がけたらどう? ランレイ そんなことオレができると思うか?
シア  いいや。 ランレイ だろ?......まあ、あいつとは嫌でもそのうち鉢合うだろう。今探す必要はない。 シア  今は現地でのグアイ目撃情報の収集が先決だね。 ランレイ 一番嫌いな仕事なんだよなー。
シア  そんなこと言わないで。ほら、行くよ。
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