會津随想録
 登場人物
・春日(かすが)絢(あや)…十四歳。本作の主人公。娘子隊(じょうしたい)志望だが生き残る。
・中野(なかの)優子(まさこ)…十六歳。竹子の妹。娘子隊隊員。
・中野(なかの)竹子(たけこ)…二十二歳。優子の姉。娘子隊隊員。
・中野(なかの)こう子(こ)…四十四歳。竹子・優子の母。娘子隊隊長。
・照姫(てるひめ)…三十五歳。容保の義姉。会津の全女性の希望。
・春日(かすが)和泉(いずみ)…十七歳。絢の兄。白虎隊士中一番隊隊長。
・松平(まつだいら)容保(かたもり)…三十二歳。会津藩主。照姫の義弟。

・依田(よだ)菊子(きくこ)…十八歳。まき子の妹。娘子隊隊員。
・依田(よだ)まき子(こ)…三十五歳。菊子の姉。未亡人。娘子隊隊員。
・春日(かすが)清吉(せいきち)…四十七歳。絢・和泉の父。妻を早くに亡くしている。青龍隊隊員。

・西軍…約七名。大体叫び声だけ。
・会津軍…約一名。西軍との兼役でも可。
・鶴ヶ城籠城中の女性たち…約四名。

・井深(いぶか)蒼音(あおね)…十五歳。現代を生きる女子中学生。祖父の家の蔵で絢の手記を見つける。
・井深(いぶか)太一(たいち)…四十二歳。蒼音の父。会津に造詣が深い。





 【一八六八年九月二十一日 鶴ヶ城】

舞台の幕が開く
舞台の中心で四名の女性たちが白旗を縫っている
絢、上手からせり出しに呆然としながら登場

絢   「……会津は、負けたのですね。勿論、勝てる戦じゃないことくらい分かっていましたけど……。」

モブ女1、立ち上がって絢のいる方へと降りてくる
 
モブ女1「春日さん、こっち手伝ってくれる?もうすぐ照姫様も来てくださるわ。」
絢   「あ、はい。すぐ行きます。」

モブ女1舞台上へと戻る
照姫、上手から登場
モブ女たち、照姫に群がる
絢、立ち上がって観客の方を振り返る

絢   「私たち会津の女が守りたかったものは守れたって、私は信じたい。」

暗転


絢(ナレ)「『皆さまは、戊辰戦争をご存知でせうか。學校で習つた、といふ人も多いのではないかと思ひます。それでは、會津藩についてはご存じでせうか。長州や薩摩が率いる西軍は鳥羽伏見の戦いを経て、會津に攻め込んできたのです。白虎隊の悲劇などは聞いたことがある人もいると思ひますが、女性が戦場に立つたことは残念ながらあまり知られていないのではないかと存じ上げます。わたくしは皆さまに、會津を守るために命を懸けて戦つた勇敢な女性たち??娘子隊について知つていただきたいのです。』


【一八六八年一月 春日家前】

絢、舞台上で掃き掃除をしている
中野姉妹、客席通路から登場

優子  「絢ちゃん!お邪魔するよ〜!」
絢   「えっ?!中野のお姉さま方……?」
竹子  「あら?和泉様から聞いていない?ちょっと春日家の敷地を薙刀の訓練で貸してもらうことになって。」
絢   「兄上が……。なら私はお邪魔になると思うのでここで……。」

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