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Ｏｈ！炎×男

Oh! 炎×男
　　　　　　　　　　　　　　　　作・酒井　一成
　　　　舞台　千葉県立稲尾高等学校とその周辺

　　　　時　　　現代

　　　　人物　稲尾高校応援団団長　　　イナオ
　　　　　　　　稲尾高校応援団団員　　　キョウコ・アケミ・タエコ・ヨシオ
　　　　　　　　野球部マネージャー　　　　ミドリ

第一場
　　　　　　　和太鼓の連打と共に幕が開くと、気が狂いそうな暑さの中、稲尾高校
　　　　　　応援団が練習をしている。エール、変拍子と型どおりの応援練習が続く
　　　　　　が、メンバーは太鼓を叩く一人・旗を持つ一人をのぞけば三人だけ。し
　　　　　　かも団長と旗持ち以外は女性のようである。しかし、この暑い中学ラン
　　　　　　に身を包み、やる気だけは負けないぞ、という雰囲気である。

イナオ　　以上で本日の練習を終了する。押忍！
一同　　　　押忍！
イナオ　　水！
　　　　　　　団員の一人、キョウコが水を持ってくる。
キョウコ　押忍！水であります。
イナオ　　おう。

　　　　　　　イナオ、ペットボトルから水を口に含む。ややあって、キョウコの顔
　　　　　　に向けて霧のように吹き出す。

キョウコ　きゃあ。
イナオ　　何だ、これは。
キョウコ　はい。
イナオ　　こんな、生ぬるい水、飲めるか！
キョウコ　だって！
イナオ　　だって、なんだ。
キョウコ　何でもありません。
イナオ　　何でもないのに、「だって」言うか？
キョウコ　何でもないんです。
イナオ　　じゃあ何だ、その反抗的な目は。あ、おまえ拳を握ってやんの。そういう
　　　　のは男のやることなんだよ。あ？おまえ、本当はチアガールやりたいんだろ。
　　　　ピラピラのスカートはいて、生っ白い足見せたくてしかたがないんだろ。
キョウコ　そんなことありません。
イナオ　　知ってるんだよ、今度の高校野球予選大会に向けて、おまえが昨日夜遅く
　　　　までぼんぼん作ってたこともよ。おとといは脱毛エステいったろ。汗くさい
　　　　学ランに身を包んだ俺たちが、なんでビキニラインのお手入れしなくちゃい
　　　　けないんだ。答えろ。
キョウコ　だって、冷蔵庫も氷もないし・・・
イナオ　　なにごちゃごちゃ言ってるんだ。タイコ、水。

　　　　　　　タエコがさっとペットボトルの水を取り出す。イナオ、ラッパ飲みす
　　　　　　る。

イナオ　　うーん、いい湯加減だ。飲んでみろ。

　　　　　　　イナオ、キョウコにペットボトルを投げ渡す。

キョウコ　飲むんですか？
イナオ　　飲めっていってるんだよ。それとも何か、俺のツバキが汚いか。糸引いて
　　　　るか？
キョウコ　飲みます！

　　　　　　　キョウコ、目をつぶってペットボトルから水を飲む。生ぬるい。

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