鍵っ子さん
『鍵っ子さん』
【登場人物】
●福口葵(ふくぐちあおい):女、高校一年生
●白井はな(しろいはな):女、高校一年生
●先輩A(せんぱいA):女、高校二年生
●先輩B(せんぱいB):女、高校二年生
○レンゲ:男、20代前半
●モズ:女、20代後半
○幸一(こういち):男、30代前半
●天狗(てんぐ):女、10代後半
○雅仁(まさひと):男、50代後半(元大天狗)
○杖突(つえつき):男、50代前半(妖怪)
●まつ:女、10代前半(木霊)
●かしわ:女、20代後半(木霊)
【イントロダクション】
「『鍵っ子さん』って、知ってますか?」
女子高生・福口葵は、友人と大喧嘩した帰り道、自宅の最寄り駅を寝過ごしてしまい、結果、名前も知らない不気味な駅で下車してしまう。
人のいない有人改札を潜り抜けた先にあったのは、『天狗伝説発祥の地 兼定村』と書かれた年季の入った看板。
そこは、妖怪達が棲みつく“神隠しの村”だった————。
仲間と共に立ち向かう、ひとりぼっちの冒険譚。
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【第一場・プロローグ/学校】
葵と先輩A・B、板付き。雑談中。
杖突も同じく板付き、その後ろで上品に座っている。
スリーピーススーツに身を包み、ネクタイをしっかりと締め、革靴は磨きあげ、髪もポマードでしっかりまとめている。
が、そのスーツはところどころ窶れていて、髪にも無造作な癖が目立つ。どこか、“キマりきっていない”。
バッグは持っていないが、杖を持っている。年季が入っている分、よく手入れされている。
杖突は、新聞を読んでいる。
葵と先輩A・Bには、杖突の姿は見えていない。
先輩A、語りだす。
先輩A ― 「どうしてここにいるんだ」おっさんはいった。突然の質問に私は動揺して、何も答えられなかった。広い道路に、おっさんと私二人だけ。おっさんはポケットに両手を入れたまま、鬼の形相でこちらへ歩み寄ってくる。タッタッタッタッタッタッタッタ! 思わず「助けて!」と叫ぼうとしたその瞬間、私は目を覚ました。辺りを見回すと、そこは自分の部屋のベッドの上で、外は夕暮れ、いわゆる逢魔が時だった……一週間たった今、私は思う。あの時出会ったあの男性こそ、“時空のおっさん”だったのでは、と……はい、お終い。
葵・B ― へぇぇ(息をのむ)
先輩B ― 怖……ねぇ! なんか他に話無いの?
葵 ― まだ聞きたりないんですか?
先輩B ― 都市伝説は、私にとってのメインエネルギーだからね!
先輩A ― 私は今のでネタ切れ、ごめん。
先輩B ― えーじゃあ次!
葵 ― 私ですか? まじかぁ……じゃとっておきの披露します。
先輩A ― なになに。
葵 ― 「時空のおっさん」が何かは、分かりますよね。
先輩B ― 神隠しに遭った時、元の世界へ戻るのを手助けしてくれる正体不明のおっさんのことでしょ。
先輩A ― 都市伝説としては有名どころだもんね。
葵 ― それと似たような話なんですけど……「鍵っ子さん」って知ってますか?
先輩A ― なにそれ。
葵 ― 大体は「時空のおっさん」と同じです。ふと異世界に迷い込んじゃった時に助けてくれる謎の存在、その名も「鍵っ子さん」。
先輩A ― (挙手をして)はい! それって、やっぱり食べ物とかも?
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