あたしヒロイン
そこは譲らないから
「あたしヒロイン」
主人公・あきほ 以下・あ
登場人物・ちひろ 以下・ち
登場人物・松下 以下・松
登場人物・マリア 以下・マ
序文
あたしヒロイン
主人公じゃない
あたしが好きなもの
みんな知らない
あたしが主人公になったら
世界は悪が勝ってしまう
あたしヒロイン
空気を読んで意地悪しちゃう
あたしの目的はただ
あんたを気持ちよくさせること
その先は知らないし
トラウマなんか聞く暇はない
あたしヒロイン
悪からあなたにさらわれる
第一場
あ「待った?」
ち「いや、待ってない」
あ「うそでしょ、なにこのコップの数」
ち「あのさあ、」
あ「なに」
ち「看護師やめたってほんと」
あ「べつにいいじゃん。あんたなんかニートじゃん」
ち「まあそうだけど」
あ「いいねえ。実家が太いってのは」
ち「あのさあ」
あ「あ。言っとくけど人生を語るのはやめてよ」
ち「え、わたしそんなに暑苦しい人かな」
あ「仕事辞めたっていうと説教する人ばっかでさ」
ち「そうじゃなくて。自由になったなら、なんか思い出作ろうよ」
あ「思い出は学生の時に十分作ったじゃん。あんたなんかいじめられてて薬局で精力剤万引きしてこいって言われて、万引きしたのはいいけど、店から一歩出た瞬間号泣して、薬局にバレたよね。あれすごい覚えてる」
ち「薬局のおばちゃん、ポカリスエットおごってくれたよね。あれは得したなあ」
あ「私は悪いことは高校で卒業したから」
ち「ほんとかな。高校の担任の先生、フェイスブックで匂わせてたよ」
あ「え。なにそれ」
ち「あきほが気に入ってるみょうちくりんなブランドの石鹸を(娘からのプレゼント)って言ってたよ」
あ「なにそれ。娘も使ってるかもしれないじゃない」
ち「でも、あきほ、先生と付き合ってたよね」
あ「ちひろには関係ない」
ち「……。とにかく、なんかたのしいことしようよ」
あ「あんたにとってたのしいことってなんなのよ」
ち「映画撮りたいんだよね~」
あ「昔から言ってるよね」
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