息子の恋人
母さんにはわからなかった
「恋人がいる」


 掃除しに息子の部屋に入る母親。

母親「クッサ。空気の入れ替えしてないわね」

 部屋の窓を開ける。すると、足元に、アダルトビデオがある。

母親「熟女。8時間ベスト。かーっ。こんなのみてマスかいてんのね」
母親「あれ。これも熟女。こんなのわたしよりブスだわ」
母親「あら。これも熟女。スケスケ下着だわ。まさか。わたしのことそういう目で見てんじゃないでしょうね……」

息子「なにやってんだよ母ちゃん、勝手に俺の部屋入るなよ」
母親「あんたの部屋から生ゴミの臭いが漂って近所の迷惑になるんだよ。酒とか隠れて買ってんじゃないよ。飲んだとしてもちゃんとすすいでゴミ箱に入れなさいよ」
息子「まさか……母ちゃん見てないよね」
母親「何を?」
息子「見てないならいいけど」
母親「なにもったいぶって」
息子「いい、いい。気にしないで」
母親「あんたの部屋ほんとおかしいね。六芒星が床に貼ってある」
息子「結局見つけてんじゃん」
母親「あんたの個性が強烈なんだよ。宇宙人と交信でもしてんの?」
息子「まあ。いずれ言うことになるかもしれないから前もって言うけど」
母親「うん」
息子「彼女ができた」
母親「いいじゃん」
息子「でも母ちゃんより年上なんだよね」
母親「あんた、母ちゃんのこと今まで変な目で見てたんじゃないでしょうね」
息子「母ちゃんは大凶だから好きじゃない」
母親「大凶ってなんなの」
息子「俺、恭子さんに人生を救ってもらうために生まれてきたんだ」
母親「恭子? 愛染恭子?」
息子「おれ、恭子さんの子供になる」
母親「あんたはわたしの子どもよ」
息子「俺は、恭子さんの子供になって、人生やり直すんだ」
母親「たしかにあんたは、就活失敗して、新卒でコールセンターのバイトしてたけど、それもうまくいかないで今宙ぶらりんのニートやってて、わたしから仕事ぼちぼちやんなさいよといいながら月に3万渡しているけど、それも月の上旬で使い果たし、年がら年中イライラしながら実家暮らししているわけだけどね」
息子「うん」
母親「結婚とかで人生って簡単に変わるもんかね。そりゃ、玉の輿に乗れる女の子は可能性あるかもしれない。だけど、あんたは、出来損ないの息子なのよ」
息子「でも、それでもいいと言ってくれる人がいる」
母親「恭子さんって誰よ」
息子「天神の占い師」
母親「そっちの方が大凶じゃない」
息子「でも金には困ってないし、僕に一切働かないでいいと言ってくれる」
母親「あんた占いとか行くの」
息子「全知全能になるには行かないと損じゃん」
母親「あんた全知全能になれると思ってるの」
息子「俺みたいなのが全知全能にならなきゃ、誰がなるんだよ」
母親「……占いにいくらかけたの?」
息子「百万」
母親「あんた。わたしのたんす預金に手をつけたのね」
息子「でもあれは俺の金じゃん」
母親「まあそうだけど」
息子「やっぱ百万かけないと見えない世界はあるよ」
母親「絶対見ちゃいけないものを見ているはずよ」
息子「恭子さんは僕を守ってくれるんだ」
母親「そういうことがあったの?」
息子「一目会った時から思ったけど、僕のことを昔から知ってるように感じた」
母親「そう」
息子「母さんにはわからないかもしれないけど。僕はツインレイだと思っている」
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