冷凍イカ、イカロスの翼になる
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「冷凍イカ、イカロスの翼になる1」

登場人物
イカ
以上


俺はイカ。だけどイカ以下。なんたって凍ってる。
さて、そんな冷凍庫で眠る未来なき俺だが、そこから打開する作戦が降って湧いてでてきた。
ある日の事だ。どうにも濡れたらしい本が冷凍庫に入ってきた。
タイトルは「イカロスの翼」
俺はイカ。だけど頭はイカ以上。エリートだ。
なるほど、太陽に近づきすぎたイカが翼を焼かれる話らしい。
イカ?翼?俺?翼?持ってねぇよ。まぁ、いいや。
俺のやる事が決まった。
ひとまず、ここを脱出しよう。話はそれからだ。

 イカ、脱出の準備を整える

俺はイカ。だけどイカ以上。なんてったって覚悟を決めた。
何のって?ここから出る覚悟さ。
決行は今夜。家主が寝静まっている間にこの冷凍庫を出る。
勝算はあるかって?
俺はイカ。だけどイカ以上。マッスルなイカ。
筋トレは欠かさなかった。モテイカなのだ。
今、決行の時!
ちゃんと冷蔵庫を閉めて、戸締りもする。
家主に迷惑をかけない。気配り上手なイカなのだ。
あばよ、さらば。二年間世話になったな!

 イカ、家の外に飛び出す

俺はイカ。だけどイカ以下。なんてったって陸上にいる。
海に帰りたい。だが、海に俺の帰る場所はない。一度は囚われた身。何もなさずして帰るという訳にはいかない。
俺は立派なイカロスの翼になるのだ。そしてこの体を解凍して帰るのだ。
まずは、頑張って歩かなければならない。
部屋の中はぬるぬる滑っていけた。だが、屋外はそうとはいかない。
アスファルトは痛いし、さらに汚い。そこに全身を横たえる訳にはいかない。
今こそ、筋トレの成果を見せる時。二足歩行ならぬ二手歩行!
俺の触腕で夜の町を駆け抜けるぜ!

 夜が明けるまで歩き続ける

俺はイカ。だけどイカ以上。なんてたって二手歩行を可能にした。
目指すは空を飛べる場所。太陽の近くに行くのだ。と思って考えたのは、そびえたつ煙突の上。ひとまずこの辺りで一番高そうだ。
人間用のはしごみたいな、凹凸を器用に登っていく。案外うまく登れるもんだ。
俺はイカ。だけどイカ以上。なんてったって煙突の上まで来た。海は広しと言えども、ここまでの高さに来たイカはそういないんじゃないんじゃないか?
しかし、ここで問題発生だ。この煙突、煙を出してきやがった。これじゃ俺は解凍の前にスモークされちまう。
こりゃたまらん。撤退!にげろ!

 煙突から慌てて降りる

俺はイカ。だけどイカ以下。なんてったって煤だらけ。
ごっほごっほごっほ。いや、咳なんか出ないけどね。
はぁ、よく考えれば、なんで俺は呼吸できてるんだろう。そういえば俺、呼吸してなくね?
振り返ってみると、俺、あの時死んでね?
なんで歩いてるんだ?なんで生きてるんだ?
拝啓、どなた様。私はイカではないのかもしれない。誰か教えてくれなイカ。敬具。
こうなれば、せめて翼を手に入れて、あの太陽に近づいてやる。
俺はイカ。だけどイカ以上。生命未満なにか。なんだって今を生きてやる。
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