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死神は転じず

『死神は転じず』　ver -2.0 2022/10/12

男(男)
先輩(女)
死神(男)
良秀(男)
娘(女)

一人の男がやってくる。舞台中央に座り胡座をかく。

男　　　昔っから流行り廃りなんて事を言うけれど、流行りってのは何も人間ばかりじゃなく神仏にもあるもんで、神様と言っても中には有り難くない神も居る。疫病神、貧乏神、疱瘡神、死神なんかは、どうも人には歓迎されねえ。ただ、例外もある。俺たちにとっちゃ死神なんてのは、喉から手が出るほど味方に欲しい神様だ。

いつのまにか背後に先輩が立っている。

先輩　　おい。
男　　　うわっ！先輩
先輩　　　うわってなんだ、うわって。
男　　　いや、気付かなかったんで。
先輩　　　お前。背後を取られてるようで、この仕事やっていけると思ってんのか？
男　　　いや、まあ
先輩　　ったく。そんな腑抜けじゃいつまで経っても首まわんねえぞ。
男　　　そうっすけど。
先輩　　　もう後がないからここに来たんだろ？
男　　　でもほら、給料はいいでしょ？がっつり稼いで一気に返す！そしたらさっさと足を洗いますよ。
先輩　　　は？
男　　　は？
先輩　　　何か勘違いしてるようだがな。お前の先月の給料はゼロだぞ。
男　　　えええ⁉︎
先輩　　　静かに
男　　　 ……。
先輩　　　なんだ、給料目当てで来たくせに何も聞いてなかったのか？
男　　　いや一応聞いたんすけど、あんまりちゃんとは
先輩　　　この業界はどこも完全出来高制、常識だぞ。就活する前にきちんと調べろ。
男　　　なんも言い返せないすけど、ちゃんと就活してたらこんな業界来てないっす。
先輩　　　一応面接あったろ。なんて言ったんだ、自己PR。
男　　　視力には自信があります！
先輩　　　それで取るウチもウチだな。
男　　　やっぱ人手不足なんすかねえ。
先輩　　　静かに
男　　　はいはい。つーか先輩だって人のこと
先輩　　　静かにしろ、来たぞ。
男　　　 ……。

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