欠落性:消失症候群
欠落性:消失症候群

【登場人物】
宙翔(そらと)……消失病に罹患する。高二。苗字は矢上。
葉月(はづき)……宙翔の幼馴染。高二。
梓(あずさ)………宙翔の担当医。性別問わず。
ナレーション(ナレ)
他の学生達

【あらすじ】
 20XX年。世界は様々な未知の病が溢れた。多くの病気は原因はおろか対症療法すらわからず、人々は正体不明の脅威に怯えながら暮らしていた。
 例えば、背中に羽が生え激痛が走る「天使病」、涙が金平糖となりあふれだし、進行すると記憶を失う「星泣き病」など。
そんな病気達は穢れた病、「穢病(けびょう)」と呼ばれ、罹患者達は酷く忌み嫌われていた。
 その中でも恐れられていたのが『消失症候群』。通称『消失病』といい、発症したが最後、約二週間で罹患者の存在自体が消えてしまう。その姿も、その記憶も。「初めから、無かったもの」になってしまう、そんな世にも恐ろしい病。
 ほら。ここにも。「無かったことになる」少年が、1人――――。

【設定/消失症候群】
原因不明の病気。通称「消失病」。 発症すると約二週間で存在が消えてしまう。また、人々や行政などの記憶や記録からも消えてしまうため、消失症候群に罹患した人は自殺を選ぶことも多い(病気によって消えなければ記憶や記録は残る)。
初期症状として、影がだんだん薄くなり、やがて消えるというものがある。影が完全に消えてからの余命が約二週間。 初期症状は約一ヶ月間続く。影の侵食が早いほど余命が短くなる。また、消える直前まで体調を崩したり、他人に感染させたりしないことが現在わかっている。ちなみに穢病指定されたのは最近。












開幕

開幕と同時にオルゴール音
真っ暗な舞台
ナレーションが立っている

ナレ  『消失病』。
        其れは罹ったら最期、やがて存在が「消える」、恐ろしい病。
        誰も彼もから忘れ去られ、生きていた証拠すら残らない。
        人々は、そんな呪いのように穢れた病を「穢病(けびょう)」と呼んで忌み嫌った。
        ほら、此処にも。逃げられない運命を背負った少年が、一人――。

セリフ終わりと同時にオルゴール音大きく
ナレーションはける



オルゴール音カットアウトと同時に明転
舞台中央に椅子二脚があり、机がない方に宙翔が座ってスマホを触っている
梓、登場

梓        ごめんごめん。ちょっと電話が来ててさー。

舞台中央の椅子二脚に制服姿の宙翔と白衣姿の梓が向かい合って座る。
梓の傍には机がある。

梓        今日は学校帰りにきたの?
宙翔       はい。部活無かったので。……その代わり明日からはみっちりやるらしいですよー……1年も入った事ですし。
梓        あーそっか。明日からゴールデンウィークだからね。まあ、雑談はここまでにして診察に入ろうか。……えーっと矢上くん、最近突然眩暈がしたり、酷いと倒れたりするんだよね?
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