めっこ清水
『めっこ清水』作:清野和也
◎登場人物
サミー・デイフナシスJr.
オーティス・フナング
フナキング・J・B
時代は特に設定しないが、現代ではない時代。福島市笹谷の「片目清水」と呼ばれる清水の中で、若い二匹の鮒、サミーとオーティスが話している。
サミー 「馬鹿なこと考えんじゃねえよ、オーティス!オレと海に出るって約束は、」
オーティス 「それサミーが勝手に言ってただけだろ」
サミー 「この清水をずーっと下って行けば海につくんだよ。お前だって良いなあっ
て」
オーティス 「思ってなかったよ。ずっとボクは「めっこ様」になりたかったんだ」
サミー 「嘘言うなよ!」
オーティス 「嘘じゃない」
サミー 「めっこ様って、お前、解ってんのか、本気かよ?」
オーティス 「解ってるよ!この清水に住んでるフナ達はみんな、」
サミー 「はあ!?お前、」
オーティス 「むしろサミーだけだよ、ちゃんと解ってないのは!」
サミー 「だって、めっこになるんだぞ、」
オーティス 「めっこ「様」。めっこ様になって、」
サミー 「片目を失うんだ。片方の目が見えなくなるんだ!あの、めっこ岩に自分から体当たりして、目を… !」
オーティス 「やっぱり解ってない。失うんじゃない、ヒトガミサマに捧げるんだ」
サミー 「失うんだ!目、見えなくなるんだぞ!!お前、本当にそんなことしたいのかよ!?」
オーティス 「そんな単純なことじゃない。めっこ様になるってことは、この清水の守り神になるってこと!家族も誰もかれもを守れる存在になるってこと!」
サミー 「オーティス!絶対にやめろ!」
オーティス 「… そう言ってさ、サミーがなるんだろ、結局」
サミー 「は?」
オーティス 「ボクだって本当はサミーがなるべきだと思ってるよ」
サミー 「だから、オレは」
オーティス 「この清水のフナの中で誰よりも勇気があるし、誰よりも泳ぐの早いし、なんだかんだで友達思いだし、サミーがなるべきだってみんな言ってる」
サミー 「ならねえって。オレは海に出るんだ。海は、オレの父ちゃんですらボロボロになったんだぞ!そのときにめっこじゃ」
オーティス 「絶対にならないんだね」
サミー 「ああ、絶対だ!!」
オーティス 「それじゃあ、ボクがなる」
サミー 「なんでそうなるんだって!オレは一番お前になってほしくないの!」
オーティス 「じゃあ、誰がなるの?明日には次のめっこ様、決めなきゃいけないんだよ」
サミー 「…だから、最初に言っただろ。誰もなることねえんじゃないかって、めっこになんか」
オーティス 「本気?」
サミー 「冷静に考えてみろって!」
オーティス 「ずっと冷静だよ、こっちは!!海に行こうだなんて夢物語語ってるサミーのほうがよっぽど、」
サミー 「お前!!バカにすんじゃねえ!オレの夢は、」
オーティス 「父ちゃんの夢だろ、知ってるよ。だとしたら、親子揃って大馬鹿フナだ!!」
サミー 「お前!!」
そこに現在のめっこ様のフナキングが出てきて
フナキング 「フフフフ…」
サミー&オーティス「フナキング様!」
フナキング 「争いの声がした、争いの声がしたゾ。清らかな湧き水の里に住まうフナたちが不仲は良くないゾ」
オーティス 「ごめんなさい、フナキング様」
フナキング 「言うてみ」
サミー 「いえ、なにも、」
フナキング 「言うてみ。なにごとも腹をかっさばいて話すことだよ。仰(おッ)しゃれ」
オーティス 「ボクがサミーのことバカにしたんです、だから、」
サミー 「いいやオーティスがめっこ様になろうって言うから止めたんです」
オーティス 「サミー!」
フナキング 「サミー。めっこ様になるのが怖いか?」
サミー 「恐くはありません。ただ… めっこ様になんの意味があるのかは解りません」
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