ルウの論争
ルウの論争
開幕
舞台上手側にシチュー 下手側にカレー
シチュー「シチュー。それは、野菜や肉、魚介類を出汁やソースで煮込んだ煮込み料理の英語による総称である。某百科事典、何とかペディアより。」
カレー「カレー。それは、多種類の香辛料を併用して食材に味付けするというインド料理の特徴的な調理法を用いた料理に対する英語名。某百科事典、ウィキ何とかより。」
二人、舞台中央へ
カレー「ねえねえシチューさん。」
シチュー「どうしたんだい? カレー君。」
カレー「あれ、見える?」
シチュー「もちろんさ。」
カレー「鍋に……」
シチュー「じゃがいもと」
カレー「にんじん」
シチュー「豚肉も入っている!」
カレー「そして今、」
シチュー・カレー「「玉ねぎも入ったぁぁぁ!!」」
シチュー「今炒められているあの食材たちから考えられる今日の夕食は……」
カレー「一つしかない。」
シチュー「そう、一つしかない。」
カレー「それは」
シチュー「もちろん」
シチューとカレー、同時に
シチュー「シチュー!」
カレー「カレー!」
シチュー・カレー「「え?」」
カレー「シチューさん、今何て?」
シチュー「『シチュー』って。カレー君は?」
カレー「私は、『カレー』って言ったよ。」
シチュー「いやいや、何を言ってるんだい?」
カレー「シチューさんこそ、何を?」
シチュー「あの材料を見たら普通、シチューだと思うだろ。」
カレー「はぁーーーーー。」
シチュー「どうしたんだい? カレー君。風速二十メートルの溜息なんてついて。」
カレー「そりゃ溜息もつきたくなるよ。だってあれはカレーを作ってるところだもん。」
シチュー「いや、シチューだろ。」
カレー「ぜぇったいカレーだね。」
シチュー「いやいや、どう考えてもシチューだろう。」
カレー「カレーだよ!!」
シチュー「では、なぜ君はカレーだと思うんだい?」
カレー「そりゃなんてったって、カレーはみんなが好きなメニューだからね。」
シチュー「シチューだって、みんな好きだろう?」
カレー「いーや、カレーの方が人気だね。あの旨味、辛み、ヒロミ……みんな大好きでしょ?」
シチュー「……今、知らない奴が混ざってたような……」
カレー「え、シチューさん旨味知らないの? 旨味っていうのは日本人が見つけた基本五味の一つで……」
シチュー「知っているとも。」
カレー「じゃ、辛み? 辛みっていうのは……」
シチュー「痛みのことで、厳密には味ではないんだろ?」
カレー「知ってるんじゃん。」
シチュー「……まぁいい。ともかく、今日の夕飯はシチューで決まりだ。」
カレー「カレーだもん。」
シチュー「ははは、カレー君のその執念には頭が下がらないな。」
カレー「え、認めてくれた?」
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