あなただから

















あなただから
    麦野 麻袋

女    二十六歳、会社員。
    付き合って三年の恋人がいる。
    恋人のことは自分にはもったいないほどいい人だと思っているが離れたいとは思っていない。ふさわしい人間になりたいと思っている。自信がないためどこか恋人に申し訳なさをいつも感じている。


■女の部屋 朝

   一月中旬、とても冷えこむ日。

 明転
 
 舞台中央に小さめのローテーブル、下手に窓、下手奥寄りに敷かれた布団で女は一人で眠っている。部屋は少し散らかっている。
 しばらくして女が目を覚まし起き上がる。

女    ……あ、起きてたんだ。おはよ。
    ……部屋の中で煙草吸わないでって言ったじゃん。吸うなら外行くか換気扇のとこで吸ってよ。もう。

    一本ちょうだい。ん。なんかどうでもよくなっちゃった。今日めっちゃ寒いし。特別。

   女、煙草に火をつける。

女    にしても早いね。急に出勤になっちゃった?

    あ、そうだ買い物行くって言ってたわ。ごめん忘れてた。

    ごめんって。

    あ、ちょっとトイレ。

   女、立ち上がり上手にはける。

女    (袖から顔を出して)なんかあったかいの飲む? ん、わかった。ケトルつけといて、カップ持ってく。コーヒーでいい? はいはい、濃いめね。わかってますよー。

女    (袖から)わー、お皿洗っといてくれたの?ありがとう。あいしてるー。

   女、マグカップを二つ持って舞台に戻る。

女    トイレ使ったら蓋閉めてって言ったじゃん。怒ってないけど。ちょっとしたお小言でーす。

    で、今日は何買いに行くんだっけ。あ、待って思い出せそう。うーんとね、えーっと……あ、そうだ、食器買うって言ってた。でしょ?
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