父の帰宅
「父の帰宅」
登場人物
・トモカ(20)
・ハルカ(20)
・ミズエ(58)
・カナコ(28)
・ヤスコ(47)
照明がつく。
トモカが駅からの道を歩いている。
照明変化。
道原家。庭。
トモカが帰ってくる。
トモカ「ただいまあ!」
ハルカが出てくる。
ハルカ「おかえり、ともちゃん!」
トモカ「ただいま、はーちゃん!」
二人、抱き合う。
トモカ「お父さんの畑、豊作だね」
ハルカ「うん。今年はナスもトマトもたくさん獲れた。それに今年はお父さんがスイカ植えたんだよ。結構獲れてさ。冷凍してまだ残してあるからあとで食べよう」
トモカ「……お父さん、収穫したかっただろうね」
ハルカ「そうだね。でも好きな畑仕事の後、ちょっと一休みのつもりがそのまま、なんて案外幸せだったのかもしれない」
トモカ「ほんとに昼寝しているみたいな顔してたもんね」
ハルカ「うん。病気が分かって早期退職してからも、なんだかんだ家でのんびり過ごせたし、よかったよ」
トモカ「そうだよね」
ハルカ「ゆっくりできるんでしょ?」
トモカ「一週間お盆休みもらったから」
ハルカ「仕事大変?」
トモカ「まあね。でもここで頑張って絶対に私も起業するんだ」
ハルカ「スタートアップかあ。すごいね」
トモカ「ふっふっふ。地元でのんびり大学生をしているはーちゃんとは気合が違うのだ」
ハルカ「失礼な。私だって頑張って勉強してるよ」
トモカ「ごめんごめん。で、新盆って何するんだっけ?」
ハルカ「えっとね、まずは迎え火かな」
トモカ「迎え火?」
ハルカ「お父さんがまっすぐ家に帰ってこられるように目印に火を焚くの」
トモカ「そういえばお父さん、めちゃくちゃ方向音痴だったもんね」
ハルカ「うん。いつだったか家に帰ってくるのに迷子になったことあったよね」
トモカ「あったあった! いつもの道が工事で通れなくなったら帰ってこれなくなっちゃってさ」
ハルカ「あんまり遅いからみんなでその辺探したり、お母さんなんて警察に行ったほうがなんて言い出してさあ。危なかったよね。いい大人が迷子で警察って」
トモカ「いつの間にか留守電入ってて、真面目くさった声で、もうすぐ着きますとかなんとか言ってて。ほんと家に帰るのに迷子になる大人がいるんだってびっくりしたもん」
ハルカ「だねえ」
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