籠の中の…
【籠の中の…】上原 炎 作
STAFF
演 出 ○○○ ○○○
舞台監督 ○○○ ○○○
音 響 ○○○ ○○○
照 明 ○○○ ○○○
装 置 ○○○ ○○○
道 具 ○○○ ○○○
衣 装 ○○○ ○○○
CAST
ユヅキ(隠塚〔いんづか〕 結月) ○○○ ○○○
ヒナタ(顕木〔あらき〕 日向) ○○○ ○○○
先生(志摩 操) ○○○ ○○○
第1場 【入学式の日・午後】
ある晴れた春の日、盛大に入学式が行われた後である。入学式に参列した入学生とその保護者達はもう校内にはいない。時間にして、3時くらいだろうか。一日の気温が落ち着きだしたくらいの時間帯の学校の屋上。その屋上の四隅の一角には下の階からつながる階段と、その屋上に出るための扉が付いた小屋のようなものがある。屋上の端の方には落下しないようにお約束通りのフェンスが立てられている。そして、そのフェンスから約30cm前後も外側に行けば地面へと真っ逆さまである。
そのフェンスの外側を一人の少女が小気味よく、かつ、危なげなく、鼻歌交じりに歩いている。どうやら、屋上の外側をぐるぐると回っているようである。その少女が小屋の裏側へと隠れたとき、屋上に出るための扉が開き、また別の少女が出てくる。扉から出てきた少女の顔は疲れ切ったような、自信を無くしてしまったような、悲壮感が漂うような、思いつめたような表情である。屋上中頃まで歩き、一つ大きめのため息をついて顔を上げたとき、目の前には鼻歌交じりに歩いている少女の姿があった。目の前を横切る一人の少女から目が離せない。
ユヅキ えーっ!?ちょっと待って!?
ヒナタ、何事もなかったかのようにユヅキの方を一度見た後、ユヅキの視線の方向の先を見る。
ヒナタ ん?特に何もなくないですか?
ユヅキ いやいやいや!そうじゃなくて!?
ヒナタ じゃ、なんですか?
ユヅキ 何でそんなところにいるんですか!?も、もしかして、アレですか!?自分で自分の命を…?
ヒナタ いや、さすがにそれはもう…。
ユヅキ だったら、早くこっちに戻ってきてくださいよ!?
ヒナタ えーっ!?ここ、楽しいですよ?風も気持ちいいし…?
ヒナタ、大きな風が吹いたのか、軽くよろめく。
ヒナタ うわーっ!?
ユヅキ いやーっ!!
ユヅキ、先の展開を見据えたのか、両手で顔を覆う。
ヒナタ …なーんてね?
ユヅキ、ヒナタの言葉をきっかけに指の隙間からヒナタを見る。
ヒナタ、ユヅキに向かって手を振っている。
ヒナタ これくらいもう慣れてるので!
ユヅキ そうだとしても、危ないので早くこっちに戻ってきてください!!
ヒナタ えーっ!?
ユヅキ 『えーっ!?』じゃないです!!もう、見ているだけで、こっちの命がいくつあっても足りないです…。
ヒナタ 仕方ないなぁ…。
ヒナタ、トボトボと屋上の端を歩き続ける。
ユヅキ なんで、また歩き出してるんですか!?
ヒナタ え?だって、そこに通れるところがあるので。
ヒナタ、立ち止まって、屋上に出る扉がある小屋みたいなところとフェンスの隙間を指さす。
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