23時のお茶会
『23時のお茶会』
もうすぐ夏になる日の23時。ぼくが住んでいるのはマンションの10階。立地もよく不思議なくらい家賃が安い。やっとひとり暮らしにも慣れてきた。そして例のごとく、また今日もポンコツなぼくは学校で失敗をしてみんなに迷惑をかけてしまった。
   
「あぁー今日も疲れたー。結構頑張ったよなぁー。なんでだめだったんだろうな…。」
「…ベランダ行こ。」
   
もやもやしたこの心を抑えるためか。無意識的にぼくはベランダへ行こうと思った。
   
(ガラッ)
   
「星きれいだな。やっぱりこの部屋にしてよかった。手が届きそうだ。」
(空に手を伸ばす)
   
ぼくはふと下を覗いてみたくなった。手すりに近づく。
10階から見る下の景色は好きだ。今にも落ちてしまいそうで。
   
ああこのまま落ちたらどうなるんだろう。10階だからなー。怪我どころじゃ済まされないよな。
   
そんな不届きなことを考えてたその時、後ろから声が聞こえてきた。
   
「死にたいのか?」
   
僕より少し低めの声。その声には圧とほんの少しの憂いが混じっていた。振り返ってはいけない。そんな気がした。
   
「そこまで孤独でもないし、辛くもないけど…。少し怖いとは思う。」
  
「…じゃあ、生きたいか?」
  
「…。」
   
ぼくは何も答えられなかった。自覚していないだけで本当は死にたいのだろうか。生きたくないのだろうか。
   
僕が答えられずにいると、再び声の主は口を開いた。
   
「寝るのは嫌か?」
   
「ううん。寝るのは好きだよ。寝ている間は何も考えずに済むからね。」
   
「起きるのは嫌か?」
   
「それは嫌だな。寝れるものならずーっと寝てたいぐらいにね。」
   
「他人を守るために嘘をつくのは?」
   
「その人のためになるなら。どうしても必要ならばだけど。」
   
「じゃあその後、そいつは己を守ってくれるか?」
   
「それは確証ないね。昔からそう他人を信じていいことがあった試しはないから。」
   
「そうか…。」
   
ふと声の主は何も話さなくなった。考え事でもしてるのだろうか。この重い空気を何とかしようと模索していると、いきなり僕の前に人が現れた。
   
でも待てよ。ここはマンションの10階。そして僕の前には空しかない。落ちてしまう!一人で焦っていると、目の前の人が話しかけてきた。
   
「いきなり質問攻めをしてしまい申し訳ない。私は死神だ。」
   
「え…?」
   
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