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 舞台は森のようなどこかである

男「ここはどこだ…」
女「ここに何をしに来たの?」
男「君、誰」
女「私は女よ」
男「男には見えないもんね」
女「ついておいで」

男「記憶が無かった。ここは何処なのか。何処に行く途中だったのか。誰かに会おうとしていたのか。何かをしようとしていたのか。わからない。何故わからないのかもわからない。ただ、僕は喉が渇いていた。そして、謎の女についておいでと言われた。これが今の僕の全てだ。」

女「どうしたの。元気ないじゃない」
男「喉が渇いてるんだ」
女「泉に着いたら飲ませてあげるわよ」
男「泉…?…ねぇ、君は誰。ここは何処。僕は何」
女「そんなこと、どうだっていいじゃない」
男「どうだっていい?大切なことだよ」
女「言わないと嫌いになる?」
男「いや…そんなことはないけど」
女「じゃあ、いいの」
男「え?」
女「じゃあ、いいの」

水の音

男「わぁ!!」
女「よほど喉が渇いていたのね」
男「げほっ、げほっ」
女「急に飲むから」
男「ありがとう」
女「どういたしまして」
男「君も飲みなよ」
女「私はいい」
男「なんでさ」
女「飲んだら、消えるから」
男「えっ?」
女「嫌いになる?」
男「いや?別に…」
女「じゃあ、いいの」

男「不思議な感じだった。彼女といるときは心地よく、自分の記憶がないことなんて、どうでも良くなっていった」

男「ねぇ、君をなんて呼べばいいかな」
女「女でいいわよ」
男「だめだよ、人には名前が必要だよ」
女「なんで?」
男「便利だからさ」
女「それだけ?」
男「ほかにも色々あるよ。名前がないと、人と関わるのが難しくなるんだ」
女「そう。じゃ、好きに呼んでいいよ」
男「うーん、じゃ、今は秋だから、アキだ」
女「アキ…」
男「安直かな」
女「いいよ、それで」

男「そうしてアキと2人の秋を過ごした。少しずつ、一緒にいるのが当たり前になっていった。よく笑い、よく泣いた。今日のご飯について一緒に考えたりした。アキが笑うとう嬉しかったし、喧嘩したあとの仲直りは何か照れくさかった」

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