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夜明けのステラ

表題：夜明けのステラ
時間：90分
比率：2:2

【登場人物】

♀●吾妻朝陽（あずまあさひ）高校3年生。天文部。
舞台作家の母、東野月子（ひがしのつきこ）を持つが火災現場で見知らぬ子供を助けようとして命を落としており、8歳で天涯孤独となる。
母親に虐待されて育っており、火災現場で他人の子供を救って亡くなった事に納得がいっていない。10年間、母の影を追い続けている。

♂●有月明（うづきあきら）高校3年生。不登校。
父親は大手電機メーカー勤めだったが内部告発を行い生活が一変。2000人の失業者を生み出し周囲から責められた父は苦心の末自殺した。
それを内部告発の巻き添えを食らった世帯の同級生になじられた末に暴力事件を引き起こし留年。現在登校していない。元演劇部。

♂●喜多川掵（きたがわみこと）高校3年生。生徒会長。
正義を信条に掲げている快活な男子高校生。幼少期に電機製品の故障による火災事故に巻き込まれており朝陽の母に命を救われている。
朝陽が恩人の娘だと言うことを知り、東野月子の作品を上演しようと企画する。母親から暴力を受けていた過去がありそういった行為に過敏。

♀●藻部美波（もべみなみ）高校3年生。
高校二年までは裕福な暮らしをしていたが、父の勤め先が内部告発により倒産し家庭が崩壊。
父は蒸発し、貧困家庭となるも残った母と一緒に日々明るく振る舞おうと頑張っている。
元演劇部、引退済み。
朝陽が虐待されていた事、明の父が内部告発して自殺した事、掵が朝陽の母に命を救われた事。それぞれ3人が互いに知らない事を知っている。

【シーン1】

朝陽　お母さんは何を考えているのかわからない人だった。
　　　いつも何かに耽っていて、いつも何かに怒っていて、いつも私をぎゅってする。
　　　でもたまに向けてくれる笑顔はお月様みたいにキラキラしていて、それがすっごくすっごく綺麗に見えて。
　　　私は、お母さんにずっと笑顔でいてほしかったんだ。
　　　なのに、どうして（私を虐待してたんだろう。別の家の子供を助けて死んだんだろう）

●お昼休み。人気のない廊下。
　朝陽は有月に本を返してもらう際のイメトレをしている。ぶつぶつと小声で。

朝陽　あの、有月くん。私、三年A組の吾妻です。あ。吾妻朝陽です。
　　　急にお家に訪ねてごめんなさい。あの、今日は本を返して欲しくて。
　　　あ、本って言うのは有月君が図書室で借りた本の事で、東野月子の。
　　　有月君が去年から借りっぱなしって教えてもらって、それで……
美波　何やってんのアンタ。
朝陽　ひょわぁ！？み、美波！？びっくりした〜
美波　廊下の隅でボソボソさ〜。なに？誰かに告るの？
朝陽　ちがっ、違うよ！！あの……本、返して貰おうと思って……イメトレをね？
美波　本？あ。あー、図書室の？って事は有月明ん家行くんだ。住所覚えてる？
朝陽　ね〜美波も付いてきてよ〜おんなじ団地に住んでるんでしょ？
美波　今日はバイトだもーん。別にとって食われたりしないって。
朝陽　でも……去年暴力事件起こしたって。
美波　……そうねー、暴力事件起こして、留年して、不登校のスリーコンボ。でもまぁ大丈夫でしょ。
朝陽　せめてイメトレの練習付き合って？
美波　はぁ。いいよ。ほら、言ってみ？
朝陽　えっと……は、初めまして。私、同じクラスの吾妻です。今日は本を返してほしくてきました。

【シーン2】

●有月宅
明　　帰れ。
朝陽　へ？

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