拝啓、あの夏へ。
翼、夢華、鈴音の3人、墓前にて。
翼「…尊、来たぞ」
夢華「はぁっ、あっつ〜い!マジ焼ける!てか、蚊やばいんですけど!」
鈴音「夢華ちゃんっ、お墓の前だからほらっ…あんまり騒ぐと起きちゃうっ」
夢華「どーせ毎日寝てんだから、ちょっとくらい起きたところでどーってことないって!それに、私ら3人集まったところで、尊の騒がしさにはかなわないっしょ!」
翼「騒がしいのはお前だけだろ。一緒にすんな」
夢華「はぁーやだやだ!こういう時カッコつけちゃってさぁ〜!クールにキメててもモテねぇから!」
翼「なっ!?」
鈴音「ま、まぁまぁ…ヘタレ好きもいますから、諦めちゃダメですよ?翼くん」
翼「…悪意のない言葉って、こうも人を傷つけるんだな…」
夢華「ほらほら、騒いでないでサッサと手合わせるよ!」
翼「だから元々はお前がだなぁ…!」
鈴音「ふふっ」
翼「…なんだ?」
鈴音「…笑ってます。尊くん」
そよ風が吹き抜け、3人の服の裾を揺らす。
夢華「…(笑いながら)ほらやっぱ、騒がしい方があいつも好きなんだよ」
翼「だな」
鈴音「ですね」
3人、尊の墓に手を合わせる。
翼(M)「幼馴染が死んで1年が経つ。悲しいも悔しいも寂しいも、まだ心のどこかに置いて、それでも時は待ってはくれないから。目を閉じると、瞼の裏にあいつの底抜けに明るい笑顔と、屈託のない笑い声が響く。……俺は、あいつと過ごした日々をゆっくりと思い出していた」
翼(M)『拝啓、あの夏へ。』
1年前。
泉川高校、3-B組。
尊「おーい!翼!いるかああ?」
翼(M)「出会ってから15年以上経っているが、気づけばいつも、俺は尊に振り回されてばかりいた。」
尊「おぉ!良かった!いたいた!」
翼「なんだよ、うるさいな。人の教室なんだからもっと静かに」
尊「なぁお前今日地理ある?教科書貸してくんね?」
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