人生はきっと、夢だらけ(男性版)
(M)冬馬「夢を追いかけることは、とうの昔にやめた。やめたはずの夢に、俺は未だにしがみついている。いっそ、諦められたら楽なのに。そう思いながら、俺は今日も生きている」


人がまばらな居酒屋。
冬馬と創が向かい合って座っている。

創「かんぱ〜い!」
冬馬「元気だな、相変わらず」
創「(ビールを飲む)へへっ、だって久々じゃないっすかぁ〜!冬馬さんと飲むの!」
冬馬「確かにな。いつ以来だろ」
創「あっ!冬馬さんの公演終わりっすよ、ほら!1年前くらいにあったじゃないすか。下北の小劇場」
冬馬「あー、あれか。冬馬が泣きに泣いてた」
創「いやほんっと!名作っすよ、あれ!芝居とか舞台とか全然分からなかったっすけど、俺あれ見て興味持ちましたもん」
冬馬「ほんと上手いな、創は」
創「ちょ、ホントっすよ!嘘じゃないっすから!彼女にもめっちゃ勧めましたよ!最近は一緒に見に行ったりしてます」
冬馬「へぇ〜物好きだな」
創「そうかなぁ。あ、でも彼女は確かにあんまハマってないみたいで。この前もやんわり断られました」
冬馬「まぁ、普通じゃないからな。芝居やる人間なんて」
創「普通かどうかは分からないっすけど、俺は冬馬さんの芝居、好きっすよ。今まで見たことない世界、見せてくれますし」

創、スマホをチラッと確認して戻す。

冬馬「…スマホ。彼女?」
創「あ、いや。全然!大丈夫っす!すみません。あ!冬馬さん、そういえば、次はいつ舞台出るんすか?俺楽しみにしてるんすよ!」
冬馬「あー…うん」

冬馬、気まずそうにビールを飲む

冬馬「もう、いいかなって」
創「え?」
冬馬「芝居」
創「いや、えっ?」
冬馬「ははっ、なんだよその顔」
創「なっ、えっ、本気っすか?やめるってことすか?芝居」
冬馬「うん」
創「なんで!?だって冬馬さん、あんなに芝居好きだったじゃないすか!ずっと続けてきたんでしょ?子どもの頃から」
冬馬「んー」
創「勿体無いですって!俺にだっていっぱい夢語ってくれたじゃないすか!客席と一体になる舞台が作りたいんだって!お互いに影響を受けて、与えて!そこで生まれる化学反応がいかに人間らしいか!!」
冬馬「…ははっ」
創「ど、どうしたんすか……全部冬馬さんが教えてくれて」
冬馬「いやなんかさ。薄っぺらいなって」
創「えっ」
冬馬「覚えてる。うん、俺そう言ったね。ははっ……うん。創にたくさん、話したな。芝居のこと」
創「もしかして、何かあったんすか?芝居を辞めたくなるような、何かが」
冬馬「ない」

冬馬、寂しく笑って、スマホを見やる。

冬馬「ないんだよ、何も。俺には、何もない」
創「そんなことないっす」
冬馬「別にさ、今に始まった話じゃない。ずっと、辞めたかった。芝居なんて。辞めるきっかけを探してた」
創「楽しくなかったんすか?芝居」
冬馬「楽しくなかった」
創「…即答…」
冬馬「楽しかったら、もっと早くに辞められてたんだよ」
創「どういうことっすか?」

冬馬、スマホを見る。

創「ん?冬馬さん、もしかして時間やばいっすか?この後予定とか」
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