何者にもなれなかった、僕たちへ。【apoptosis】
海辺
衰弱した少年2人が、砂浜に寝そべって夜空を見上げている

カイト「大丈夫か?」

レオン「うん、平気。ドクドク言ってる、心臓」

カイト「当たり前だろ。俺たち生きてるんだから、まだ」

レオン「…ごめん」

カイト「何が」

レオン「巻き込んで」

カイト「だから、何が」

レオン「僕はあそこにいても、死ぬだけだったけど、カイトは…」

カイト「…」

レオン「僕は、もう死ぬことが決まってた。自分の身体のことだもん、自分が一番よく分かるよ。けど、カイトは違うじゃん」

カイト「(ため息)あのなぁ」

レオン「カイトは、僕と一緒に外に出たから」

カイト「買い被んなよ」

レオン「…っ」

カイト「俺がここにいるのは、俺の意思だ。お前と死ぬことを選んだのは、俺の意思だ。俺の意思を否定するな」

レオン「…ごめん」

カイト「それに、悪いのはお前じゃないだろ。こんなクソみたいな研究してる大人たちだ」

レオン「何の為に、生きてたんだろうね。僕たち」

カイト「さぁな。もう俺は興味ないね」

レオン「怖くないの?死ぬの」

カイト、腕に浮かび上がる数字のカウントダウンをみつめる

カイト「…あと、3時間24分」

レオン「お揃い」

カイト「当たり前だろ。あの施設を抜け出した時から、俺たちの心臓に埋め込まれたよく分からん機械が作動して、俺たちの寿命は決められた。2人仲良く約3時間後にはあの世行き」

レオン「強いね、カイトは」

カイト「そう見えるだけだ」

レオン「そっ、か…っ」

レオン、カイトの手をそっと握る
その手は、微かに震えていた

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