溺れた月を見上げながら
〜昼、学食〜

倉橋「なぁ、高村ー。ノート見せてくれね?」

高村「またかよ」

倉橋「いやぁ、寝坊しちゃってさー悪ぃ!」

高村「はぁっ…いいけどさ。何?」

倉橋「教職!月曜1コマとか無理だってほんと…起きれねぇ」

高村「まぁ、分かるけど」

倉橋「だろ?つかさ!聞いてくれよ、あのハゲ親父から再提出食らったんだけど!課題!」

高村「課題って…静物画の?橘先生厳しいからなー」

倉橋「厳しいってか、あれイチャモンだから!マジであいつとセンス合わなすぎ。無理なんだけど。てか、元々あいつのゼミとか入る気なかったんだよ!分かってたんだよ、あいつとセンス合わないのさぁ」

高村「…」

倉橋「絵里も、再提出食らったって言ってたしさ…もーマジでイラつくんだけど!あいつのせいで余計な課題増えるしさぁ、教職は指導案だろ?なんで大学生こんな忙しいわけ?…って、高村?」

高村「…ん?あぁ、ごめん」

倉橋「またボーッとしてる。いつも話聞いてないよな、お前」

高村「そんなことないけど。…夏休みなのになぁって」

倉橋「は?何言ってんのお前。まだ学校始まったばっかじゃん?5月だけど?今」

高村「…ほら、よく大学生ってさ、『人生の夏休み』って言われるじゃん?」

倉橋「あぁ、確かになー」

高村「夏休みにしては、休めないなってさ」

倉橋「ほんとだよなー専門学校でもないのに、めちゃくちゃ絵の課題出るし。俺ら教育学部なんですけど。つっても、教職嫌いだけどな」

高村「…絵描くのは好きだけどね。元々そっち目指してたから」

倉橋「あれ?高村そっち?」

高村「特にやりたいこともなくてさ。絵描くの好きだったから、芸術系の大学とか専門学校とか受けたけど、全部落ちた。別に先生になりたいわけじゃないけど、ここなら絵描けるかなと思って。」

倉橋「まぁそうだけど。え、じゃあ高村さ、教員免許取っても、先生にならないわけ?」

高村「…考え中?」

倉橋「へぇー意外。ここみんな、先生になりたいやつしか来ないと思ってた」

高村「(小声)まぁ、何も考えてないし」

倉橋「え?」

高村「…いや?そういえば、絵里ちゃんとは上手くいってるの?」

倉橋「ん?あぁ、今のところなー。まぁ付き合ってまだ2週間だし…」

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