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なんでもない日に花束を

『なんでもない日に花束を』

◆登場人物◆
・201号室
とうこ…2つ先の学区の中学に勤める美術の先生。
　　　　千紘とは恋人だが、ふたりの関係は公にしていない。
ちひろ…フリーのイラストレーター。燈子とは学生時代から付き合っている。
　　　　ルームシェアという名目で同棲中。

・202号室
かずくん…家具屋の店員。彼氏とケンカ中。燈子と仲が良く、助けを求めに来る。
もとくん…かずくんの彼氏。電話のみ登場（声はなし）

・203号室
遠藤さん…引っ越してきたばかりの夫婦の旦那さんの方。30代後半。
はつみさん…遠藤さんの奥さん。30代後半。
いろは…遠藤家の一人娘。実は養子であることが引っ越し中にわかってしまい、家出した。

・204号室／店頭（大家）
なぎさ…見た目は男性のXジェンダー。いおりと共同生活している。
いおり…見た目は女性のデミロマンティック。なぎさと花屋を営んでいる。
★2人ともアセクシャル

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『なんでもない日に花束を』

どこかにあるふつうの街。
最寄駅からバスで十五分くらいの、大通りから一本入ったちょっとおしゃれな住宅街。
その一角にあるマンションの一階には、大家が経営する花屋が店を構えている。
ひとつ上の階には部屋が四つ。こじんまりしたマンションである。

夕方。
舞台上には、二階の四つの部屋が見えている。
二〇一号室では、ちひろといろはが何か話している。
二〇二号室では、かずくんが誰かと電話している。
二〇三号室には、誰もいないが、引っ越しの荷物が散らばっている。
二〇四号室では、なぎさが夕飯の支度をしている。
どこにでもあるような「普通の」生活が営まれている様子が伝わる。

※間口が広ければ横並びで四区画が望ましい。狭い場合は二つの区画を使い分ける。
※区画については演出により変えることは可能である。

◆ただいま

とうこが二〇一号室に帰ってくる。大きな荷物を抱えていて、前がよく見えない。
はつみが二〇三号室に帰ってくる。ソワソワとして、落ち着かない。スマホを握りしめている。
いおりが二〇四号室に帰ってくる。花束を4つ抱えている。

いおり　　　こんばんは
とうこ　　　あ、どうもー
はつみ　　　あの……
とうこ　　　はい？
はつみ　　　……いえ
いおり　　　とうこちゃん、荷物大丈夫？
とうこ　　　なんとか。いおりさん配達です？
いおり　　　いや、今日のは余っちゃって。１ついる？
とうこ　　　あ、じゃあ。あとでもらいにいっていいですか？

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