疑心暗鬼
疑心暗鬼

〇登場人物
岩居   強盗犯1。リーダー気質の男。
冷川   強盗犯2。冷静な女。
平手   強盗犯3。ドジな体力担当。

・舞台はとある小屋。3人は強盗をした帰り。
岩居   やっほ〜い!
平手   やってやった、やってやったぜ!
岩居   これで俺達、大金持ちだ〜!
平手   ぃいぇ〜い!
冷川   こら、お前達、少しは冷静になれ。
岩居   何だよ、お前ももっとはしゃげよ。3億だぞ、3億!
平手   ついにやってやったんだ…俺だってやればできるんだ…夢みたいだよ…
冷川   だから少し落ち着けって、良いか?確かに私達は3億の強奪に成功した。しかし、逃亡まで完全に成功したわけじゃない。完全に逃亡に成功するまで、油断するのは危険だ。
平手   まぁ、それもそうか…
岩居   結構遠くまで逃げて来たと思うんだがな…
冷川   警察が非常線を張っているはずだ。ひとまずはそれを凌ぐまで気を緩めるな。
岩居   へいへい。
平手   そしたらさ、俺達3人、交代交代で外の見張りをするってのはどうだ?
岩居   お、良いアイディアだな。
平手   そうだろ?そしたら、…そうだな、まずは言い出しっぺの俺から行こう。
冷川   ああ、頼んだぞ…
 ・一時暗転。舞台上には、岩居と冷川。
冷川   …どうした?顔色が優れないが。
岩居   …俺のことか?
冷川   お前しか居ないだろう。
岩居   …まぁ、気にすんな。この取り分の金の使い道を考えていただけだ。
冷川   何だ、そんなことか。だったらもっと楽しそうな顔をしろよ。
岩居   いや、そうは言ってもよ…
冷川   …遅いな、平手の奴。そろそろ交代しても良いと思うんだが…
岩居   …あ、…ああ。そうだな…
冷川   …どうした、お前。本当に。今更後悔してるんじゃあるまいな?
岩居   …いや、別に。…ところで、だ。冷川、お前、平手の奴が逃亡時にナイフを1つ、落としていったことには気付いているか?
冷川   ああ、気付いているさ。
岩居   いつ?
冷川   あいつがナイフを落としたその瞬間にだ。…全く、馬鹿なドジをしたもんだ。
岩居   流石、…冷静で鋭く見てるもんだな。
冷川   まぁな。
岩居   あいつ、自分がナイフの二刀流だってこと散々自慢しておいてこれだもんな。結局これじゃあ、俺らと同じ1本のナイフ使いじゃないか。
冷川   一緒にするな。私には拳銃もある。
岩居   弾はまだ残ってるのか?
冷川   ああ、ギリギリな。
岩居   そうか…
冷川   ……。
岩居   3億…だもんな…
冷川   ふっ、
岩居   何だよ。
冷川   …いや、…お前、この金を独り占めしようと考えているんだろ?
岩居   ……な、何言ってるんだよ。そんな馬鹿な…
冷川   私も同じ考えだ。
岩居   え。
冷川   (拳銃を岩居に向け、)ここまで大掛かりなことをしておいて、1人1億じゃ少し割に合わない。そうだろ?
岩居   冷川…ああ、そうだよ。1億じゃ…いや、いざ目の前にあるこの金を見てたら…不思議と、沸々と欲が増してきてな…
冷川   なるほど。自然な感情だ。だったら、私が今この場でお前を殺して自分の取り分を増やしたとしても、お前には何の異論もあるまい。
岩居   …あるに決まってんだろ。まず、俺が大人しく殺られるとでも思ってんのか?
冷川   …(拳銃を下げ、)いや、思わない。…そもそも、お前を何とか殺したとしても、殺すまでに手こずり、弾切れにでもなってしまった場合、私は後から入って来る平手の奴と素手とナイフで殺り合わないといけない。そうなったら、私の勝算は極めて低い。
岩居   …まぁそうなるだろうな。
冷川   一方、お前なら平手と五分で殺り合える。そこで、だ。私と手を組もう。
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