マクガフィンと黎明
『マクガフィンと黎明』
作:槻市灯代

【登場人物】
●男       ……女の子に話をしにきた男。万丈と同じ容姿をしている。

●女の子  ……万丈の物語を楽しみにしている女の子。

●万丈タクマ ……世界を盗む大怪盗。愛を願い「触れた生命が溶ける」体質になった。

●セツナ   ……市長の娘。世界を願い、「五感を失う」体質になった。

●市長    ……街の市長でセツナの父。人望を願い、「人にアレルギー反応を起こす」体質
になった。

●ゴロツキ  ……洞窟に棲む狂人。日の光を願い、「太陽に当たると体が崩れる」体質になった。

●スポイト  ……街にすむ天才博士。万能の知識を願い、「物事をすぐ忘れる」体質になった。

●ベスト  ……街の治安を守る警察。強靭な体を願い、「超虚弱体質」になった。

●ローズ  ……お調子者の住民。クールな性格を願い、「妙な言葉を口走る」体質になった。

●リップ  ……ローズの彼女。ローズの最愛の「人」であることを願い、半猫の姿になった。

●ライター  ……街の様々なものを運ぶ郵便屋。夢を持たないため、普通の体。


【世界設定】
    舞台となる街は、高い塀で囲われており、外を見る事はできない。
    また、住民たちは皆妙な病に侵されており、各々異なる症状に苦しめられている。
    住民たちは街の歴史を知らず、
    それらがなぜ起きているのか、物語の終盤に語られることとなる。





    この物語は、女の子と男が二人で話しているところから始まり、
    男が話す物語の世界を覗き見る、という形で進んでいく。
    男の話す物語は、作中世界のある街で実際に起きていた歴史であり、
女の子もかつてその渦中にいたが、それを覚えていない。
    女の子の正体はなんなのか、男はなぜ女の子に物語を話すのか、この空間はどこなのか。
    観客はそんな疑問を抱えたまま、男の話す物語の行方を見守ることとなる。
    なお、「男」と「万丈タクマ」は同一の役者が演じる。

    【1場 まだ醒めない夢の中で】

    明転。
    ベッドに女の子が座っている。今起きたところなのだろうか、目がうつろだ。
    朧げな意識のまま、辺りを見回す。

    ふと、窓から月の光が差し込む。
    女の子はベッドから出て、窓の外を見る。
    暗闇に差し込む光だけが彼女を照らす。後ろに近づく男には気づいていない。

男 よう。
女の子 きゃ!

    女の子が声の方へ振り向くと、いつからいたのだろうか、男が立っている。
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