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海辺の墓

～ラッコは漂流する～

　　「　海辺の墓　」　　　　　　　大沢ケイト

◎登場人物◎

　大国　陽子　　　（４０）フリーライター

　澤井　　　（男）（５２）陽子の恋人

　大国　時枝（女）（６５）陽子の母

　大国　和美　　　（３８）陽子の妹

　大国　正和　　　（６８）陽子の父　大国海苔の社長

　大国　すえ　　　（８８）陽子の祖母

　タキ　　　　　　（７０）大国海苔の従業員

　松子　　　　　（４０）大国海苔の従業員　陽子の友人

　頼子　　　　　（４０）ヘルパー　陽子の友人

●序●

　　　暗闇の中、フェリーの音、波しぶきの音。

　　　女の小さな悲鳴があがる。「すみません、帽子！拾って！」の声。

　　　そこはフェリーの甲板である。女が一人、手すりにつかまり船の揺れに耐えている。

　　　男が一人、これも船の揺れに足をとられないよう注意しながら女の方に向かって歩いてくる。

　　　手には女が飛ばしたものと思しき、つばの広い帽子を持っている。

女　　　よかった。拾ってくれて。ありがとうございました。

男　　　いえいえ。海の上は風が強いですからね。（船が揺れる）おおっと。

女　　　（手すりにつかまりながら）忘れてたわ。（船がまた揺れた）

男　　　（しっかりと手すりにつかまり）揺れますね。

女　　　（こちらも手すりを掴んでいるが男よりは余裕が見える）ええ。

男　　　島の方ですか？

女　　　昔、住んでたんです。久しぶりです。

男　　　どうりで船に慣れてそうな雰囲気です。おっと、また揺れた。はあ、こりゃ、たまらんな。（気分悪そう）

女　　　船酔いですか？

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