雪魂アグノイア 第四話
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僕だけの世界は静かだった。
何も起きない。
食いたい衝動も食われる恐怖も湧かない。
魂が昇る事もなくなった。
雪が降るのを見なくなってどれだけの時間が過ぎただろう。
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管理者はいくつかの世界を覗き見る力を持っていた。
今は僕がその力を受け継いでいる。
強くなりたいとは思っていなかった。
ただ今いる場所を理想通りにしたかった。
僕以外に誰もいない、僕が食う相手も、僕を食う相手もいない世界。
その為に少しだけ食いながら強くなった。
そして法則に反する異物として排除されそうになった。
だから、管理者を食った。
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強い相手を食ってしまった。
ようやく辿り着いた世界の在り方を崩してしまうかもしれない。
不安を拭えなかった。
何も起きない世界はそれからも静かだった。
以前と同じに思える状態に戻って、僕は身構えた体から力を抜いた。
しばらくして、初めて味わう感覚に気付き始めた。
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管理者の力で僕は他の世界を覗くようになった。
何故そうしたのかは自分でも分かっていなかった。
それは、そうして覗き見た世界の一つだった。
【日本の風景】
めちゃくちゃな表記の文字が画面に表示され、倍速・逆再生・不協和音など耳障りな曲が流れる。
「あああ…。これは…! これは…!!!」
後に僕はそれが言葉や音楽だったと知る。
この時はまだ理解出来ていなかった。
読む事も聞く事も出来なかった。
それでも…。
「なんて…、なんて…、素晴らしいんだ…」
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初めて味わったのは飽きる感覚だった。
それを脱する為に他の世界への興味が生まれた。
言葉や音楽が何なのか、その時点で分かる必要はなかった。
それまでの自分自身の中に存在しない、分からないものに刺激を求めていたから。
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