ここは知らない待合室
待合室
A(病衣を着た少年)
B(ラフな格好をした少女)
C(制服を着た少女)
(薄暗い殺風景な部屋。味気のない椅子が横一列に並べられている。その椅子の端の方にAが座って寝ている。少しして、Aが目を覚まし、ぽつぽつと独り言を話し始める。)
A:いつの間に寝てたんだろ、俺。……ううっ、寒。
……寝ても帰れねえってことは、夢じゃないんだろうな。はあ。厄介だな。
……早く帰りたい。まあ、どこに帰ればいいのかわかんねえけど。
……いつまでこうしてればいいんだろ。暇すぎて死にそうだ。こうやって独り言でも喋ってないと、狂っちまいそう。はあ。
……静かだな。何の音も聞こえない。もしかして、俺の耳が聞こえなくなったんだろうか。いや、それはないか。自分の声、聞こえてるし。
……寒い。静かだ。寒い。それに、寂しい。
(A、ひっそり泣き始める。
と、足音が聞こえる。Aは慌てて泣き止む。)
A:や、やばっ。誰か来た。
(Bゆっくり歩いて登場。虚ろな目をしていて、止まる気配がない)
A:な、なんだあいつ。大丈夫か?
……お、おーい?おーい!
(B、無反応)
A:おい!
B:うわああっ!
A:気がついたか?
B:気が付いたもなにも……
A:……
B:……(突然テンションが上がって)気がつきすぎて心臓止まるかと思った☆やっぱり人間気がつきすぎるとダメだね!ほどよく気がつかなきゃ!まあ気がつかないのは気がつかないのでだめなんだけど気がつくっていってもやっぱり適度な気がつくというものがあってすなわちそれは気がつくにおいての真の気がつくというものであり仮にそれをスーパー気がつきモードと称したならば
A:(Bの台詞の途中辺りから被せて)おい、おいおいおい!気がつくっていう単語言い過ぎてやべーやつみたいになってるぞ!大丈夫か!
B:(はっとして)あ、ごめん。大丈夫。ちょっとビックリしすぎて一時的にアホになっただけ。
A:一時的だとしてもあんた、アホの才能あるぞ?えーっと、あんた、名前は?
B:え?名前?自己紹介タイム?あっ、もしかしてナンパ!?うわー、ナンパされたの初めて!初めてのナンパ!初めてのナンパ!
A:初めてのおつかいみたいに言うんじゃねえよ!国民的癒し番組を汚すなって!
B:ナンパしてきたのはそっちじゃんか。なに、照れてるの?ツンデレ?
A:ちげーし
B:べ、べつにあんたのこと、好き、とか、そういうことじゃないんだからねっ!
A:無駄にクオリティー高いのやめろよ!
B:あ、あたしの名前!?教えてあげてもいいけど……あっ、べっ、べつにあんたのこと好きだから教えるわけじゃないから!
A:はやく教えろって!
B:あたしの名前は、えーっと、そのー、うーん、なんていうかつまりー……アンジェリーナジョリー!
A:どの顔が言ってんだよ!お前明らかにアンジェリーナジョリーというよりは田中花子とか山田良子みたいな名前の似合う顔してるよ!
B:まあまあ落ち着いて。そんなに頻繁に怒ってると血管が切れて死んじゃうよ!
A:お前が怒らせてんの!
B:そうなの!?
A:そうだよ。
B:それはごめんなさい。
A:素直でよろしい。
B:いや、それがね。あたしだって真面目に答えようとしたんだけど、わからなかったの。
A:なにが?
B:名前。自分の。
A:……はー。
B:あー!ふざけんな死ねって感じのため息吐かれたー!ひどーい!センセー、この人がいじめてきまーす!
A:いや、違う。
B:なにが違うんだよ?
A:実は俺も思い出せないんだ、名前。
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