舞台上に誰もいなくなったとしたら客席にいた自分は演劇を作りはじめると思うのです。
『舞台上に誰もいなくなったとしたら客席にいた自分は演劇を作りはじめると思うのです。』

・登場人物

観客1
観客2
演劇部員
弾圧する者

・その他、人物
弾圧する者たち
演劇人



 ある日、全ての演劇人が消えた世界。
 舞台下のスポット(客席)、一人の人物が舞台を見上げながら語っている。

「それは急にはじまりました。ある日、突然、演劇をやっていた者は全て拉致され、監禁され、噂では殺されてしまった。
公演情報に載った名前は過去にまで遡り一人一人しらみ潰され誰一人例外なく淘汰されてしまった。
あっと言う間に世の中から演劇は無くなってしまった。

いや

そこには観客だけが残されていたのです」

 客席から舞台へゆっくりと上がって行く。

「舞台上に誰もいなくなったとしたら客席にいた自分は演劇を作りはじめると思うのです」

 <転>

舞台上、演劇人が次々と捕まって行く場面。
弾圧する者たちは芝居のフライヤーを読み上げ、そこに載っている団体、演劇人たちを捕まえ連れて行く。
フライヤーが巻き散らかされ、暫しの喧噪の後、誰もいなくなり静かになる。

 <転>

 舞台上、観客だった者たち(観客1、観客2)が話している。

「まさかこんな世の中になるなんてな」
「ああ......」
「こんなに儚いモノだったなんて流石に思わなかった」
「ああ......」
「呆けすぎだろう! 気持ちは分かるけれど」
「ああ、ああ」
「こんな世の中だけれど演劇、観たいよな」
「そうだね」
「映像も規制されてしまってどうにもならないもんな」
「......」
「このまま演劇は無かった事になるのかな」
「......でも、自分は演劇を覚えているんだよ」

 <転>

 暗い帰り道。人気の無い土手。
 演劇をやっていた者は全ていなくなってしまった。
 世の中の人も極端に少なくなってしまい、重苦しい空気が絶えず流れている。

 そんな中、観客1の耳に信じられない声が聞こえてくる。
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