封戸探偵事務所の事件ファイル-0山奥の怪物-
登場人物
封戸万次郎……40歳男性。封戸探偵事務所を経営する探偵。通常の事件はもちろん、霊感と知識を活かして幽霊や怪異の絡む事件も取り扱っている。
木戸恭介……35歳男性。今回の依頼人。山奥の集落で暮らしている。気が弱い。
一香……13歳くらいの女の子。双子で村から捨てられ、山奥に住んでいる。単純で明るい。
二美……13歳くらいの女の子。双子で一香の妹。一香と同じく山奥に住んでいる。冷静で思慮深い。
イチ……13歳くらいの男の子の幽霊。昔双子だという理由だけで山に捨てられた。活発で気が短い。
二……13歳くらいの男の子の幽霊。イチの弟。マイペースで普段は優しい口調で喋る。


(森の奥。万次郎と一香、二美が対面している)
万次郎 君たちか。山奥に暮らす化け物は。
一香  見ない顔だね、おじさん。一体なにしに来たの?
二美  姉さん気をつけて。
一香  わかってるって。
万次郎 随分と可愛らしい姿の化け物だな。一体いくつだい?
一香  歳?そんなのわかんないよ。
二美  おじさん消えてくれる?じゃないと私たちがあの世に送っちゃうよ。
万次郎 ……
一香  どーしたの?あ、まさか、ビビっちゃった?
万次郎 ……そんなところだ。今日のところは一旦引き上げるよ。じゃあな。
一香  なんだったんだ?

(イチが一香の背中から、二が二美の背中から現れる)

イチ  どうしておそわなかったんだよ!
一香  そう言われてもなー。
二美  ……多分、私たちじゃあの人には勝てない。
イチ  は?
二美  普通の人ですら今の私たちにはとどめを刺すことができない。
一香  まだ力を使いこなせないんだよ。
ニ   そうだね……
二美  あのおじさん、普通の人とは違った。多分私たちでは……相手にならない。
イチ  そんなの、やってみなきゃわかんないだろ!
二   お兄ちゃん、落ち着いて……
イチ  お前だって人間に恨みあるだろ?ズタズタにしてやりたいだろ?
二   そうだけど……今この場で中途半端なことしても、2人を危ない目に合わせるだけだよ。
イチ  じゃあどうすればいいんだよ。
ニ   うーん。あの人が一体何者なのかわからないから、どう対処したらいいか……
イチ  そんな悠長なこと言ってる場合なのか!?
ニ   もう、お兄ちゃんはすぐカッとなる。
イチ  これがカッとせずにいられるかっての!
ニ   まあ、お兄ちゃんはそうだよね。大丈夫。僕も色々考えてるからさ。
イチ  ……お前、なにを企んでる?
二   ここでは秘密。また後で教えてあげる。
一香  ねー、兄弟会議終わった?
二   うん。もう大丈夫。ごめんね。
二美  もう暗くなるから、とりあえず帰ろう。
イチ  人間ってのは暗がりで動けないから不便だよな。
一香  不便で悪かったね。
二美  でも、その不便な人間を使わなきゃ、望みも叶えられないあなたたちも、人のこと言えないんじゃない?
二   ごもっともです、二美さん。

(万次郎と恭介が山を下っている)
恭介  ちょ、ちょっと探偵さん!
万次郎 何か?
恭介  何か?じゃないですよ!どうして引いたんですか!約束と違うじゃないですか!
万次郎 そう言われましても、こちらにもこちらのやり方があるんでね……
恭介  そんな悠長なこと言ってる場合ですか!一刻を争うんでしょ?
万次郎 急いだ方がいいとは言いましたが、一刻を争うとは言ってないですよ?
恭介  しかし……
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