優等生と不良は交わらない
優等生と不良は交わらない
・如月真奈 優等生を演じている。
・神田千草 学校をさぼりがちな不良少女。
あらすじ
優等生の如月真奈、不良の神田千草。
平日の昼間、学校をさぼった二人の女子高生が、心を交流させる。
いつも遠くから眺めているだけだった。
私は、彼女と、話がしてみたかった。
【真奈】
平日の昼間を、制服を着て歩き回るのが、野望の一つだった。
自分で言うのもなんだが私はなかなかの優等生だ。
品行方正、成績優秀。弓道部でも結果を出す文武両道。友人も幅広く先生方からの信頼も勝ち取っている。
そんな優等生を完璧に演じている私を、私は誇りに思う。
しかしその半面。日々積もった退屈という鬱憤を、刺激的な体験で晴らしたいという悪い自分も存在する。今日の私はまさにそれだ。
閑散とした駅前は、どこか遠くの場所なのではないかと錯覚する。
自分が異物になってしまったようなこの状況が、たまらなく気持ちを高揚させた。
思いっきり日差しを浴びる。気持ちのいい青空が、かえって背徳感を煽る。
意地悪な秋の風が吹いた。
イヤリングが揺れる。短く折ったスカートがひらひらと舞う。たかがこんな冷たい風に鼓動が高鳴る。
最高の気分だ。ねぇ、そこのあなたもそう思わない?
【千草】
平日の昼間を、あてもなく、だらだらと浪費する。
友人からの連絡もなければ、おじさんからの依頼もない。下品で低俗で愚痴ばかりの友人も、お金を持て余した異性に縁のないおじさんも、私は嫌いじゃない。退屈を忘れさせてくれるし、必要以上に踏み込んでもこない。それくらいがいい。求めてしまったら、きっと、傷つけてしまう。
何かを運ぶような秋の風が吹いた。
自分を守るための金髪が乱れる。安物のペンダントが不安げに揺れる。
風の吹いた方向へ目線を向けた。まるで似合わなっていない不良姿のクラスメイトと目が合った。
千草「何やってんの、優等生。」
真奈「さぼりです、不良びっち。」
【千草】
不遜な笑みだった。私の知っている如月真奈はこんな雰囲気の子ではなかった。
いつでも模範的な優等生で、誰にでも優しい、真面目なクラスメイト、のはずだった。
ほとんど話したことはない。同じ教室にいるけど、私たちは決して交わることのない、どこか遠く離れた存在だった。
その優等生と、カフェに入った。まるでそうするのが自然な、友人のように。
私は、彼女と、話をしてみたかった。
【真奈】
私の知っている神田千草はもっと反抗的な生き方をしていた、ように思う。
低俗な人間とばかり関わっている、自分勝手で我儘で子供のようなクラスメイト、だと思い込んでいた。
こうして面と向かいあうと、物静かで、思慮深く、想像よりもはるかに大人びていることがよくわかる。
よく観察すると、ただ派手なだけじゃなく、さりげなく最新コーデや美容にも気を使っているのが見て取れる。その美貌にわくわくした。
私は、彼女と、話がしてみたかった。
千草「さすがにスカート、短すぎ。そこまでいくと可愛くない。」
真奈「そうなんだ。いまいち加減がわからなくて。」
千草「いつもの方がよっぽどいいよ。」
真奈「やめてよ。優等生だってね、たまには羽目を外したい時くらいあるんだよ。」
千草「それもそうだね。悪かった。忘れて。よく似合ってる。」
真奈「何それ。今更遅いってば。」
【千草】
どこからどうみても私は素行の悪い不良だ。
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