コメディ「カミブクロ」(短編)
5人芝居。25分版
【カミブクロ】
水谷健吾
※この作品は連作短編集『クロスワード』に収録されている物語です。この作品だけで完結していますが、連作短編集『クロスワード』全体をご覧いただくことでよりお楽しみいただけます。
【登場人物】
宮田浩介(男):バイト、特撮オタク
上岡猛(男):新入り、宮田の友達
向井(不定):バイト、陽キャが嫌い
香川遥香(女):バイト、お局的な立場
主任(不定):研究所の主任
【本文】
ホビーショップで高校生の宮田が店員に文句を言っている。
戦隊モノの衣装である白衣に対して不満がある様子。
宮田「ですからね。私がこちらのお店で取置きをお願いしたのはテレビドラマ『商店街戦隊マチオコシンジャー』の宿敵イオンモール博士の2代目の白衣でありまして、こちらの白衣は3代目のものなんです。あのですね、私が高校生だと思ってバカにしていませんか?貴重なお小遣いを費やしているんですよ!あぁ、もう話にならない。店長を呼んでください! …… あなたが店長なんですか!もう、とにかく2代目オンモール博士の白衣を取り寄せしてくださいよ!」
上岡「宮田?」
宮田「上岡くん?」
宮田、白衣を隠す。
上岡「あれ?あ、それってアレじゃない?イオンモール博士の」
宮田「上岡くんも知っているんですか!?いや、そんなわけがない。上岡くんのような一軍がこんなものに興味を持つわけがない!これは罠だ!何かの罠だ!」
上岡「なんだよ罠って。俺、こういうのすげー好きだから」
宮田「……ほんとですか!」
宮田、上岡と話し続ける。
上岡、はける。向井、入ってくる。
舞台は「カミブクロ」と呼ばれる紙袋型の動物が管理されている研究所になる。
宮田「それが、私と上岡くんが仲良くなったきっかけでした。上岡くんは凄くてですね、学内テストは常に1位。3年間、生徒会役員を務めあげ、さらにはバスケ部のエースだったんです」
向井「うわ、陽キャかよ」
宮田「そして、今はあの慶應大学に進学しています。ウチから慶應って快挙も快挙ですからね」
向井「でも珍しいですね。良いところの大学の人って、このバイトやりたがらないから」
宮田「社会勉強でしょうね!上岡くんのような人間は将来、この国を背負って立つことになるでしょうから。見聞を広めようとしているんですよ」
向井「見聞ねぇ」
香川(声)「こちらでーす」
香川、上岡、下手奥からやってくる。香川、「カミブクロ」のブギブギを散歩させて戻ってきたところ。紙袋に首輪が巻かれ、リードがつながっている。ブギブギの封は閉じられている。
上岡「ありがとうございます」
宮田「ああ!上岡くん!うわ、もうこんな時間!すいません、入り口まで迎えにいくつもりだったんですけど」
上岡「全然!紹介してくれてありがとね」
宮田「みなさん、上岡くんです」
上岡「上岡猛です。色々ご迷惑かけちゃうこともあると思うんですけど、よろしくお願いします!」
香川「よろしくー!」
宮田「拍手。拍手! あ、もうすぐ主任がくると思うので、少々お待ちを」
向井と香川、ブギブギのバイタルをチェックしてシートに記入。
上岡、ブギブギを興味深そうに見ている。
宮田「生で見るの初めてですか?」
上岡「うん!あれが、ブギブギ?」
宮田「そうです!この研究所で管理している、カミブクロのブギブギです」
上岡「あれは……散歩してたの?」
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