雪魂アグノイア 第三話
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【水場を走って逃げる足】
ちょうどいい相手に見付けてもらえた。
僕が美味そうに見えてずっと追ってきている。
追い込まれた振りをして、例の穴にそいつを落とす。
僕は気配を殺して待つ。
そいつが無防備な状態で穴から這い上がって来るのを。
【肉と骨を咀嚼する音】
そいつの四肢を食う。四肢だけを食う。
腕と足を失ったそいつは穴からもう這い上がれなくなる。
しばらくすると、穴の中でそいつは動かなくなって、白い煙が昇る。
そして雪が降る。いつもより、多めに。
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僕はこの実験を繰り返した。
白い煙と雪の関係性を確かめる為に。
食いたくも食われたくもない僕は雪に身を潜めていた。
その分、他の奴らよりは周りの状況をよく見ていたのかもしれない。
食うか食われるか、それがこの世界の在り方。
自分と近い魂は美味い。
相手の魂を食うと自分の強さが増す。
強さが増せば更に強い魂を食いたくなる。
それは本能的に分かっていた。
きっと他の奴らも分かっているだろう。
食われた相手に魂を取り込まれる。
つまり、食われれば自分の存在はなくなるが、魂は消えない。
それが全てのはずだった。
僕は食われる以外の魂の失い方を知った。
動かなくなってしばらくすると白い煙が昇る。
この煙がきっと魂だ。
魂が高くに昇ると雪が降る。
時々降るのが当たり前に思えていた雪は、魂の残骸。
だとすれば、食うか食われるかの食物連鎖を終わらせる方法がある。
僕以外に気付いている者はきっといない。
食いたくないと思っているのは僕以外にいないのだから。
繰り返した実験そのものが、終わらせる方法でもあった。
■■■
僕を食べようと追ってきた相手を穴に落とす。
無防備に這い上がってきたところで腕と足だけを僕が食う。
動けなくなって魂が高くに昇る、雪が降る。
僕以外に誰もいなくなれば、僕が食う相手も、僕を食う相手もいなくなる。
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