Zero point on load
ヨランダ(30)女。興業劇団「サブリナ」の創設メンバーであり、稀代の天才と言われた女優。演劇に関して右を出るのはいないし、それに甘んじることなく練習を欠かさない。
アレック(20)不問。興業劇団「サブリナ」の新人。ヨランダが力を入れて演技指導する役者。台本の読み込みが早い。
あらすじ
興行劇団「サブリナ」の新シーズン公演の初日。とあるアクシデントに見舞われた舞台の上でヨランダはいた。団長から面倒を見てくれと言われたアレックは、とても落ち込んでいるヨランダに対して話を振っていく。
やがてそれは創立の話など、「原点」に立ち返る話であった。新しく所属する劇団でも、役者の原点に立つと誓ったとき、団長たちが帰ってきた。
さぁ、迎えに行こう。
○ 興業劇団「サブリナ」の舞台上(夜)
新シーズン公演の初日
観客は帰り、公演の終わった舞台の上
感想やファンレターの手紙の束、筆記用具を持ってヨランダが座っている。
本人は浮かない顔で紙束を読み、時折メモをしている。
そこに、客席のほうからアレックが差し入れのサンドイッチを片手にやってくる。
その際に、裏方などの人達に声をかけていく
アレック「差し入れ、置いておきますー。…はい、そこのテーブルのは照明さんで食べちゃって大丈夫です! あ、大道具さんたちのは向こうのテーブルにまとめておきました、食べちゃってください! …ヨランダさんには私が持っていきます。はい、大丈夫です!」
舞台に差し入れを乗せ、舞台端からヨランダに声をかけるアレック
アレック「ヨランダさん。休憩、しませんか」
ヨランダ「…まだ、公演の感想読んでるんだけど」
アレック「とか言ってますけど、さっきから、手が進んでませんよ。…公演終わってからも、様子がおかしいし、心配です」
ヨランダ「…さっきの、公演の最後」
アレック「はい?」
ヨランダ「(溜息)さっきの公演の最後、レティシアが転んじゃったじゃない?」
アレック「そうですね、かるーく捻っただけ!って言いながら、団長に連れられて行っちゃいましたねぇ、お医者さんのところ」
ヨランダ「あれ、私のせいなの」
アレック「それも、観客以外は皆分かってますよ。アクシデントなんだから、そんなに落ち込まなくても」
ヨランダ「…知った口を」
アレック「って「団長が」言ってました。…あと、公演終わってから、何も食べてないですよね?」
ヨランダ「…」
アレック「お腹がすいては、進むものも進みませんし。この興行劇団「サブリナ」の裏メニューでも食べましょ」
ヨランダ「…ピーナッツバター・ジャムサンドでしょ。甘すぎるのは嫌いなの」
アレック「そういうと思いましたけど、「団長からの」差し入れですし、…食べてくれないと心配なので、団長から説教される前に、私が怒りますよ。あとは普通に団長に言いつけます」
ヨランダ「…わかったわよ、面倒を起こさないで頂戴」
大きな溜息をつきながら、紙を置き舞台の縁へ移動し腰掛ける
アレックも倣って舞台に飛び乗り、縁に腰掛ける。
アレック「よ、っと。へへ、よかった」
ヨランダ「何がよ」
アレック「少しでも、食べてくれるようになって。今まではこういう時は絶対に、食べなかったでしょ?」
ヨランダ「あなたが面倒を起こそうとしている感じがしたからよ…どっち?」
アレック「あ、こっちです」
二人でサンドイッチを食べる
アレック「このサンドイッチって、ここはブドウジャムじゃないですか、団長から聞いたんですけど。「ウチはこの味なんだー」って」
ヨランダ「そうねぇ、アイツがここ作った時に「家庭の味、というかウチの味を作りたいんだー!」って騒いで作ったやつよ」
アレック「ウチの味かぁ。私の家では、イチゴジャムでしたねぇ、ヨランダさんちは、何のジャムだったんですか?」
ヨランダ「…もう覚えてない。気が付いたら、というか、もうこの味しか分かんないかも」
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