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ナナイロ（桔梗）

「桔梗」

登場人物
・クワ
・キキョウ

夜。あるアパート。二階には二つの部屋が並んでおり、ベランダが並んでいるのが見える。
片方のベランダには、ラフな格好をした一人の男性がいる。クワである。

クワがお酒を片手にぼんやりしていると、もう片方のベランダに一人の女性が現れる。
仕事帰りなのか、スーツ姿をしており、片手にはお酒を持っている。キキョウである。

二人同時にお酒を飲む。

二人「あ～っ！うま！」

二人、お互いの存在に気づき目が合う。思わず会釈。
二人の間に若干の沈黙。

キキョウ「あ、あの」
クワ「（驚き）はい？」
キキョウ「あぁ、すみません急に」
クワ「あぁいえ全然。えっと、何でしょうか」
キキョウ「あぁいや……クワさん、お酒、好きなんですか？」
クワ「（持っているお酒見て）えぇ、まぁほどほどに。キキョウさんは？」
キキョウ「あは、それなりに。仕事終わりに飲むのがおいしくて」
クワ「うわぁそれ、めっちゃいいですね」
キキョウ「（少しテンション上がる）わかります？だから今日も仕事終わりの一杯を」
クワ「（キキョウ見て）あぁ、それで……」
キキョウ「（自分見て）あはは、今日は着替えるのもめんどくさくってつい」
クワ「あぁ、お疲れ様です」
キキョウ「いやいやそんな。……クワさんは、今日は？」
クワ「あぁ、僕は今日休みで。ゆっくりしようと思って」
キキョウ「なるほど」

少し風が吹く。二人は風にあたり涼んでいる様子。

クワ「（ふと）最近涼しくなりましたよね」
キキョウ「ね、ほんとに」
クワ「風が前よりも冷たくなったというか」
キキョウ「確かに」

少しの沈黙。

キキョウ「クワさん、ベランダでよく飲むんですか？」
クワ「あぁ、そうですね。宅飲みの方が好きだし、今の時期涼しいし」
キキョウ「そうですね」
クワ「それに、こうやって夜風にあたるの、僕好きなんですよ」
キキョウ「いいですね」
クワ「なんというか、うまく説明できないんですけど……自分を見つめ直す時間になるというか」
キキョウ「（考える）自分を見つめ直す……」
クワ「（少し恥ずかしくなる）あぁっ、いやっ、そんな大したことでもないかなぁ？ただ、まあなんとなく、自分をいい感じに、持ってける？みたいな？」
キキョウ「（吹き出す）ふふっ、そんな慌てなくても」
クワ「（恥ずかしい）いや、なんかよくわかんないこと言っちゃった感じがして、すみません」
キキョウ「いやいや。（少し思案して）でも、クワさんの言ったこと、なんかわかりますよ」
クワ「そう、ですか？」
キキョウ「はい」

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