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東京メランコリニスタ【vol.3】

新宿の鯱

　東京、新宿。
　オフィス街の一角に建つ金融会社のワンフロア。
　煙草に火を付ける社長と思しき男が、目の前で土下座する男を見下ろしている。

逆叉：勘違いしないでほしいなぁ、加藤さん。
逆叉：俺は何も無作為に金を貸してるわけじゃない。
逆叉：あんたなら信用できると思ったから貸したんだ。
逆叉：そこんとこちゃんとわかってる？
逆叉：いわば「投資」なんだよこれは。
逆叉：その信用をあんたは裏切ったわけだ。
逆叉：あーあ、悲しいよ俺は。

　顔を上げた男が必死に何かを懇願している。
　紫煙を吐き出した社長は男の懇願など耳に入っていない。
　蹴り飛ばされた椅子が宙を舞い、派手に床を転がっていく。

逆叉：ガチャガチャ言ってんなよコラァ！
逆叉：話と違うだァ？
逆叉：意見できる立場かお前。あァ！？

　社長の恫喝に震え上がる男の胸ぐらが乱暴に掴まれる。

逆叉：全部てめぇ自身が招いたことだ。
逆叉：散々イメクラに狂って良い思いしたんだよなぁ？
逆叉：じゃあ、耳そろえて返してもらわねぇと困るよ。

　胸ぐらが離され、開放された男が咳き込む。
　蹴り飛ばした椅子を立たせ、どかりと座り込む社長。
　煙草を大きくふかす。

逆叉：心配しないでよ。俺も鬼じゃないからさ。
逆叉：あんたには期待してねぇけど、娘さんと奥さんには代わりにしっかり働いてもらうから。
逆叉：良い店紹介するぜ。

　男のすすり泣きが聞こえてくる。
　不快感をあらわにする社長。

逆叉：……泣いてんじゃねぇよ、みっともねぇな。
逆叉：噛まれちまったあんたの責任だ。
逆叉：しつこいぜ、俺は。
逆叉：逃げたってどこまでも追って行くからな。

　新宿、歌舞伎町。

　オープンカフェのテラス席に座る男女二人組。
　四人で一つのスマホを覗き動画を視聴している。
　やがて動画が終了し、男が顔を上げる。

大和：どうですか、蜂須賀さん！　新作動画！
りこぴん：今回は初心にかえってみたんだぁ。
りこぴん：気になるあの人へのアプローチの仕方を「LINE編」、「実践編」に分けて、男女それぞれの目線から実演を交えてレクチャーしてみましたっ！

　頬杖をつき、無言で男女二人組の話を聞いている蜂須賀。
　隣にはどこか気まずい様子のリリィ。

蜂須賀：……。
大和：特にこの「気になるあの子を確実にオトすキラーワード・トップ３」は超・胸キュンものですよ！
りこぴん：うんうん！
りこぴん：ね、どうだった？　リィちゃん。
りこぴん：ヤバかったでしょ？

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