星をたべる 【朗読劇可】
星をたべる
黒野しおり
ナレーション
先生
少年
同級生
猫
魚A
魚B
宇宙人
トッテンカン爺さん
ナレ 星をたべる、黒野しおり。この物語は、普通の町に住んでいる、ちょっぴり暗くて、うつむきがちな小学生の少年が、少し不思議な冒険をするお話です。
先生 ――では、ここにある粉をグルグルとかき混ぜたら何ができますか?……はい、そこの君。
少年 えっ。はい。えーっと。ごめんなさい。わからないです。
ナレ 少年は先生の授業をきちんと聞いていませんでした。最近元気のないお母さんのことが心配で、そのことばかりを考えていたのです。
先生 空をぼーっと眺めていてはだめですよ。きちんと授業は聞かないと。
少年 ご、ごめんなさい。
先生 何か空にありましたか?
少年 いや、その……。
先生 少年は何も言えずにうつむいてしまいました。
先生 そういえば今日は100年に一度の流星群の日でしたね。だから空を見ていたんですか?でもまだ星が流れてくる時間ではありませんよ。
少年 ……はい。
先生 星といえば、星をたべると、どんな人も元気にしてしまう、という伝説を皆さんは聞いたことがありますか?
だから、昔の人たちは流星群の日になるとどこかに小さな、きらきらした星が落ちていないか必死で探し回ったそうです。
……今日の夜、もしかしたら落ちた星を見つけることが出来るかもしれませんね。
ナレ 先生がそう言うとクラスがざわざわし始めました。そんな中、キーンコーンカーンコーンと、授業の終わりを告げるチャイムの音が鳴り響きました。
先生 次回、今日の復習から始めたいと思います。では、本日の授業はここまで。
少年 あの!先生!
ナレ 少年はたまらず先生に駆け寄りました。星をたべる話を、もっと教えて欲しいと思ったのです。
先生 どうしましたか?珍しいですね。授業で何か分からないところがありましたか?
少年 そ、そうではないんですけど。その……さっきの星のお話が気になって。
先生 あの話ですか。
少年 ほ、本当のことなんですか?
先生 どうでしょうね。伝説は伝説ですから。嘘かもしれません。
少年 そう、ですか。
先生 でも、何もないところから嘘は生まれません。……そうですね、たとえ話をしましょうか。目玉焼きを作るのには何が必要ですか?
少年 塩と胡椒?
先生 もっと根本的なものですよ。
少年 それじゃあ、卵?
先生 そうです。卵ですね。目玉焼きを作るのには、どうしても卵が必要です。……つまり、伝説とはそういうことなのではないでしょうか?
ナレ 少年は、先生の言っていることがちっとも分かりませんでした。
先生 つまり、何か一つの重要なモノがなければ料理は完成しないでしょう?それと伝説は同じだと思うのです。伝説は確かに嘘かもしれません。
でも、何か一つ、「重要な」ホントウがないとそんな話はそもそも生まれてこない、ということです。
少年 なるほど?
先生 だから、伝説は嘘かもしれません。でも本当かもしれません。
少年 ほ、本当ですか!?
先生 だから、今日頑張って探せば、星が手に入るかもしれませんね。
少年 そっか……ありがとうございます!
ナレ 少年は学校走って飛び出しました。頑張って星を探して、見つけることが出来たら、お母さんを元気にすることが出来るかもしれない。頭の中はそのことでいっぱいでした。
同級 ねえねえ!
少年 ……。
同級 ねぇってば!!
少年 え!?え、っと何?
同級 さっきから呼んでいるんだけど!!
少年 ご、ごめんなさい。
ナレ 学校を飛び出してすぐの場所で、同級生に呼び止められてしまいました。少年は、いつも下を向いて歩いているので、同級生がいることに気が付かなかったのです。
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