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うえには空

うえには空　
黒野しおり

あおい
りんな
まこと

全体的にゆったりとした雰囲気の劇をイメージ。
特にあおいとりんなの会話は、ゆったりと進行する。(テンポの良さより、親しい友人同士の気の抜けた会話をイメージ)

場所は、どうやら穴の中。
とても深い場所で、大きな横穴が広がっており、ずっと上には空が見える。
舞台照明は薄暗い。
あおいとりんなが寄り添ったように座っている。
二人の周りには、多くの食料や荷物、また電灯がある。

あおい　ねえりんな？
りんな　んー？
あおい　……なんとかしてさ、この上の穴から外に行けないかな。
りんな　そうだねえ。
あおい　あの穴から外に行けたらさ、何か変わるんじゃないかなって思うんだ。
りんな　んー……。
あおい　ね？そう思わない？
りんな　まあ、確かにこの現状は打破できるんじゃないかな。
あおい　……何日たったんだろうね？
りんな　途中から数えるのめんどくさくなっちゃったから。
あおい　だよねぇ。……外いけないかなぁ。
りんな　上ばっかり見上げてても何も変わらないと思うよ。
あおい　だって上を見て、雲とか星を見るくらいしかすることないんだもん。
りんな　んー……。まぁ、確かに。
あおい　この話、ちょっと前にもしなかったっけ。
りんな　あおいが上ばっかり見てるからじゃない？
あおい　あー……確かに。
りんな　うん。
あおい　外に出れたらさ。
りんな　うん。
あおい　なんか、ここじゃできないことやりたいよね。
りんな　例えば？
あおい　例えば……空を飛ぶとか。
りんな　ここを出ても出来る事じゃないと思うけどな。
あおい　良いんだよ。夢だから。あくまで夢なの。
りんな　あー、ならいっか。
あおい　空飛んでさ、どこまでも行くんだよ。
りんな　なんかさーどこまでも飛んでいきたい時ってあるよね。
あおい　あるある。しょっちゅうあった。例えば……なんか、辛いことがあったとき。
りんな　満員電車に乗らなきゃいけない朝の時間帯。
あおい　悲しいことがあったとき。
りんな　ねずみランドで、ファストなパス戦争に勝ちたいなって思うとき。
あおい　……さっきからずいぶん具体的だね。
りんな　あおいの夢が象徴的なだけだと思うよ。
あおい　夢は象徴的な方が良いんだよ。イメージだよ。イメージ。
りんな　……ふーん。
あおい　だってさ、夢を見るだけならただじゃない？
りんな　タダって言うと、なんだか夢で商売してるみたいでやだな。
あおい　……夢を見ることはさ、希望だから。
りんな　だから商売じゃないと。
あおい　いや、結局さ、希望を与えることも商売だから。みんな、どこかで夢とか希望とかを買ってるから社会が回るんだよ。
りんな　……消費社会？やりすぎてインフレ？
あおい　なんかその言い方されると夢が無さすぎる。

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